★11/10(土)13:45『第三世代』上映後
登壇ゲスト:花代さん(アーティスト)、渋谷哲也さん(ドイツ映画研究/本作字幕翻訳)
ユーロスペース
★10/27(土)11:35『第三世代』上映後
登壇ゲスト:渋谷哲也さん(ドイツ映画研究/本作字幕翻訳)
☆10/28(日)13:40『13回の新月のある年に』上映後
登壇ゲスト:渋谷哲也さん(ドイツ映画研究/本作字幕翻訳)
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In einem Jahr mit 13 Monden
7年おきに来る「月の年」に、新月が13回巡る年が重なると、なす術もなく破滅する者が幾人も現れる―。
エルヴィラは男性から女性へと性転換をした。男装して街を彷徨い、男娼を求めるエルヴィラの「性」。愛への憧憬と不安。孤独。パートナーとの別れ、離別した妻子との対話、幼少期を過ごした修道院のシスターが語る出生の秘密、性転換手術を促した男アントン・ザイツとの再会…、エルヴィラの最期の5日間。
原案・製作・脚本・監督・撮影・美術・編集をファスビンダー自身が手掛けた、自主製作作品。様々なイメージがセンセーショナルに提示される、ファスビンダー最大の問題作。
◆鬼才ファスビンダーの核心をなす重要作!
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの作品には必ず同性愛的要素が含まれるが、いわゆるLGBTが主人公となる作品は意外に数少ない。女性同性愛を扱った『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』、男性同性愛者たちを主人公とした『自由の代償』と『ケレル』があるだけで、そこに加わるのが男性から女性へのトランスセクシュアルを主人公とした『13回の新月のある年に』である。ただしこの作品はいくつかの意味でファスビンダーとして異例の作品である。初公開当時の映画評ではファスビンダーならではの性的少数者をめぐる物語と評された以上にはほとんど言及されず、つまり性的少数者というレッテルはむしろ映画の理解を妨げる結果を招いたとすらいえる。またこの映画製作の背景には当時彼の伴侶だったアルミン・マイヤーの自死というスキャンダラスな要因があったことも影響し、ファスビンダーにおいてあまりに個人的かつ例外的作品として評価を躊躇わせることにもなった。だがファスビンダーの生涯と全作品を概観できる現代においてこの映画の位置づけを考えた時、やはりファスビンダーにとって一つの核心をなす重要な一作であることは疑いない。
テキスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究)
Die dritte Generation
意志と表象としての世界―。彼らも、我々も、もはや何も理解できない。理解しようとはしない。暴力で構成された社会に曝され、支配され、共感し、欲望し、絶望する。現実への無関心。怒りと悲しみとおかしみが横溢するこの世界は、とっくに壊れている。革命への理念を持たず、ただ目先のスリルだけを追い求める「第三世代」のテロリストたち。彼らは企業と警察に利用され、その煽動にのって誘拐事件を起こす―。
言葉と音の叛乱。ファスビンダーが放つ、最も難解で自由な作品。
◆タブーと戯れ挑発する、ファスビンダーのマイルストーン的作品!
この映画のタイトルに示された世代分類についてファスビンダー自身が解説している。近代ドイツ史の大きなスパンでは第一世代は1848年の革命以降の時代、第二世代はヴァイマール期からナチズムの時代、そして第三世代が戦後の現代ということになるが、短いスパンで1960年代以降の政治の季節における過激主義の世代分類としても捉えられる。第一世代は世界を変革する理想と権力に対する絶望の中で夢と大義をもって行動した60年代の活動家たちを指す。だが67-8の運動の過熱化と分断の中で一部の過激な者たちは地下活動としてテロ行為を行っていった。それが第二世代すなわちバーダー=マインホフグループを中心とした者たちを指す。その後に来るのが第三世代であり、彼らはテロ行為を自己目的化し大義もなくただ活動する者たちである。しかもそれは、元来は敵対者だった資本家や権力の手法を真似るという状況まで生み出すことになる。テロリストと権力の癒着の問題はその後実際に解明されてきており、まさに本作はファスビンダーの先見の明を示すとともにまさに社会のタブーに触れる危険な内実をも明らかにしている。
テキスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究)
1945年5月31日、南ドイツのバート・ヴェーリスホーフェンに生まれる。高校卒業前に退学し俳優の勉強を始め、この時期ベルリンに新設されたドイツ映画テレビアカデミーの入学試験を受けるが合格しなかった。その頃に数本の短編映画を作っている。67年より劇団「アクション・テアター」に所属。68年には仲間と共に劇団「アンチテアター」を設立し、俳優・演出・作家として活躍した。同時にこのメンバーによる挑発的かつ実験的な長編映画制作が始まる。とりわけ長編第2作『出稼ぎ野郎』は外国人労働者をテーマにして大きな反響を呼んだ。
1971年アンチテアター解散の年、ファスビンダーはダグラス・サークのメロドラマ映画に感銘を受ける。彼は芸術的に様式化されしかも大衆に受ける映画を作ろうと志し、『四季を売る男』等の代表作を生みだした。1978年『マリア・ブラウンの結婚』の成功により新しいドイツ映画をリードする存在として幅広く認められるようになった。そして79年には念願の企画である『ベルリン・アレクサンダー広場』映画化を実現する。その後『リリー・マルレーン』など国際的スターが共演する大作映画を撮り上げる。
ファスビンダーの映画は女性の抑圧、同性愛、ユダヤ人差別、テロリズムなどスキャンダラスなテーマが多い。それゆえドイツ国内では常に激しい論議を巻き起こしてきた。だがそうした厄介なテーマを提示しつつも、観客を飽きさせない娯楽映画の方法論を守り続けた。彼は戦後ドイツにおいて映画産業の外部での活動に徹しながら、元来対抗文化であった「新しいドイツ映画」をメインストリームに押し上げた貴重な存在なのである。だが1982年6月10日に急死、それとともにニュー・ジャーマン・シネマの一時代は終りを告げた。
公開日 | 劇場 | TEL |
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北海道 | ||
12/6(金)『第三世代』、12/27(金)『13回の新月のある年に』※「KINOフライデー・シネマ」にて上映 | シアターキノ | 011-231-9355 |
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