地球より800年ほど進化が遅れている別の惑星に、学者30人が派遣された。その惑星にはルネッサンス初期を思わせたが、何かが起こることを怖れるかのように反動化が進んでいた。王国の首都アルカナルではまず大学が破壊され、知識人狩りがおこなわれた。彼らの処刑にあたったのは王権守護大臣ドン・レバの分隊で、灰色の服を着た家畜商人や小売商人からなっていたこの集団は“灰色隊”と呼ばれ、王の護衛隊は押しのけるほど勢力を担っていた。
地球から派遣された学者の一人に第17代貴族ドン・ルマータと名乗る男(レオニド・ヤルモルニク)がいた。ルマータは、地域の異教神ゴランの非嫡出子であるとされていた。誰もがこの話を信じたわけではないが、皆ルマータのことを警戒した。
知識人たちの一部は隣国イルカンへ逃亡した。そのなかには農民一揆の頭目である「背曲がりアラタ」や、錫鉱山で使役される奴隷たちもいた。ルマータはアルカナルに潜入し、知識人たちを匿うべく努めていた。
ある日、ルマータは皇太子のいる寝室で当直の任務に就く。だがその直後に、彼は寝室に押しかけた“灰色隊”に取り囲まれ、逮捕を告げられる。ルマータは抵抗するが、結局捕まって連行される。“灰色隊”の隊長クシス大佐がルマータに絞首刑を宣するが、その直後にドン・レバ率いる“神聖軍団”の修道僧たちが大佐を撲殺する。やがて街に“神聖軍団”が集結する。ドン・レバは彼らに“灰色隊”を殲滅させ、自らの主導による新たな政権を確立しようとしていた……。



アレクセイ・ゲルマンがストルガツキー兄弟のSF小説「神様はつらい」[邦訳は太田多耕訳『世界SF全集24 ゴール、グロモワ、ストルガツキー兄弟』(早川書房、1970年)所収]映画化に向けて動いていると報じられた際、その報道は世の映画関係者の間にかなりの驚きをもたらし、強い好奇心をかき立てたといわれる。その理由としては、ゲルマンがそれまでに作ってきた映画の主題はいずれもソビエト連邦成立以降を時代背景とし、かつ実際の歴史的出来事に材を採ったものであり、この作家が空想科学小説を原作とする作品を撮ることなど、ほとんど誰も想定していなかったからである。
しかし実のところ、ゲルマンは1964年に発表された「神様はつらい」を自身の監督第一作の原作にしようと目論んでいた。一説によると、刊行直後に早くも映画化を考え始めたとされる。そして彼は、『七番目の道連れ』(67)をグリゴーリー・アローノフと共同監督した直後の1968年に、同小説に基づく脚本第一稿を書き上げていた。

1938年レニングラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)生まれ。父は、高名な作家、脚本家、劇作家のユ-リー・ゲルマン。1960年、レニングラード演劇・音楽・映画大学を卒業。卒業後、舞台監督になるが、後に映画に転じ、レンフィルム撮影所に入る。ヴェンゲーロフの『労働者開拓地』(65)で助監督としてスタートを切り、1967年、グリゴーリー・アローノフとの共同監督で『七番目の道づれ』を手がける。1971年、『道中の点検』を監督。原作は、父のユーリー・ゲルマンの小説「"祝新年"作戦」。
