終着駅
  • 原題:INDUSCRETION OF AN AMERICAN WIFE
  • 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
  • 脚本:チェザーレ・ザバッティーニ
  • キャスト:ジェニファー・ジョーンズ/モンゴメリー・クリフト/リチャード・ベイマー

  • 製作年:1953年
  • 製作国:アメリカ=イタリア
  • はい、『終着駅』、これイタリア映画です。ヴィットリオ・デ・シーカの監督です。
    それでジェニファー・ジョーンズ、アメリカの女優ね。それからもう一人、モンゴメリー・クリフト、これもアメリカの男優ですね。この二人が出るんですね。
    けど、監督はデ・シーカなんですね。

    なんで、デ・シーカでこの映画やったんだろう?セルズニックが制作してるんですね、アメリカのセルズニックですね。
    これは、アメリカの女がイタリーの青年と仲良くなったの、けどアメリカの女はちょとした火遊びね、やっぱりアメリカへ帰って行こうとしたのね。

    そうするとこのイタリーの青年が、モンゴメリー・クリフトが、「おまえ、薄情だな、帰るのか、帰るのか」。それでローマのステーションでその女を引きずり降ろして、パーンと殴るのね。凄い映画なの。
    つまり、イタリーの気質とアメリカの、どう言ったらいいのか、計算的な、女の感覚とがぶつかるわけね。

    この映画の一番いいとこは、そのステーションの場面ね、それが凄かったのね。
    デ・シーカの見事な代表作品ですね。これを撮ったのがセルズニックなんですね。
    デビット・O・セルズニックは、何でイタリーで、こんな監督で、こんな映画撮ったのか?
    何でジェニファー・ジョーンズでこんなの撮ったのか?
    セルズニックは前々からジェニファー・ジョーンズに結婚申し込まれてたのね。

    で、セルズニックも自分の嫁さんなんかどうでもいい、このジェニファー・ジョーンズの何とも知れん誘惑的な感覚にノっちゃったのね。
    すっかりジェニファー・ジョーンズに参っちゃったのね。
    そういうセルズニックは、あんたの好きな映画撮ってやる、それならこういう映画撮って下さい、それが『終着駅』だったのね。
    見事にジェニファー・ジョーンズは、これで一躍名女優になったのね。
    で、セルズニックは儲かったのね。

    という訳で問題の作品ですけど、ジェニファー・ジョーンズいう人は、セルズニックをどんどん、どんどん食い込んで言ったのね。
    ジェニファー・ジョーンズは、かわいい夫があったんですね。その夫を蹴ってセルズニックと一緒になったんですね。

    そうして、「あんたは、私との結婚のお祝いに何くれるの?」言ったら、セルズニックは「何でもあげる」と答えた。
    そしたらジェニファーは、「『風と共に去りぬ』以上のもの作って下さい」言ったのね。
    「おまえ、そんなものほしいの?」「そうよ、そうよ」と言ったのね。
    それでつくったのが、ジェニファーの最高の作品でしたね。

    というような訳で、ジェニファー・ジョーンズは怖い女優ですよ。
    けれどもセルズニックが死んだら、とたんに人気なくなったの。あんなに有名な女優が。
    それでセルズニックの、この夫人、ジェニファー・ジョーンズはパーティーに行ってもみんなに総スカン。それで酒ばっかりのんで、表出て酔っ払って街頭で倒れちゃったのね、この女優が。
    それをトラックが引っかけて、「おっ、誰か倒れとるぞ」って見たらジェニファー・ジョーンズだったのね。

    そういうね、かわいそうな過去を持ってるんですけど、私は帝国ホテルでこのジェニファー・ジョーンズに会ったんですね。
    それはセルズニックと結婚して間もないころのジェニファーに会ったの。

    奇麗な女優でね、もう頭から足先まで奇麗くてね、その衣服のグリーンの衣装がとっても奇麗なのね。そいで「How are you?」と、私と握手したのね。
    その匂いのいい事、奇麗な香水の匂い。
    私は家へ帰っても手を洗わなかったね、あんまりいい匂いがするんで。
    そのぐらいジェニファーは奇麗でしたよ、やっぱりセルズニックが参るだけの女でしたね。

    という訳で、この『終着駅』は彼女の、本当にほしかった、デ・シーカで名女優として演りたかった作品ですね。ジェニファーの野心があふれた作品ですね。

    【解説:淀川長治】