一日だけの淑女
  • 原題:LADY FOR A DAY
  • 監督:フランク・キャプラ
  • 脚本:
  • キャスト:メイ・ロブスン

  • 製作年:1933年
  • 製作国:アメリカ
  • 『一日だけの淑女』“Lady for a Day”これはフランク・キャプラの名作でした。

    見事な映画でした。どんな映画と言いますと、ホテルでギャングがちょっと暇ができてポケットにいっぱい金があって「どこで遊ぶかな」そう5,6人のギャングの群れがそう思っとりました。ところがお婆さんが手紙を書いておりまして、泣きながら書いておりました。で、「ばあちゃんおまえ何しているんだ?」と言ったら、「私は掃除やっているババアだけれども、修道院に行っている娘にいっつもこのホテルの便せんで手紙出している。で、娘が私をホテルに泊まっている貴婦人と思ったらしい。私がホテルに泊まっている金のある未亡人と思っているから私はそのつもりで話合わして、私はね今日はね、なんて言ってちょっと金のある風で手紙書いた。ところがまあ5年ぶりに帰ってくるってきたんです。で、帰られたらどうしようと思ったんです」
    そうするとそのギャングがたまには良い事で人を泣かすのもいいな。俺たちはいつも拳銃で人を泣かせるけど、たまには心温かい泣かせ方もしようかな、と5,6人が相談しました。「うん、そうしよう」「婆さんおいで、おまえね、ここのレディーにしてやるから、貴婦人にしてやる」「えー私を?」「うん、衣装買ってきてやるから綺麗なレースの着物着ろ。ドレス着ろ。で、みんなそれぞれ役もってね、おまえを一日だけ綺麗な貴婦人にしてやる」ったら婆さん泣いて「そんな事してくれますか?」と泣いたの。そうしてその娘が来た時に本当に淑女になって見せた映画ですね。

    これは涙がいっぱい溢れるくらい心の映画になりました。ギャング、拳銃で人を殺して泣かすよりも心で泣かす。温かい心で泣かす、いかに良いことかギャングが目覚めた映画ですね。いかにもこの映画はそういう感じのキャプラの本当のキャプラらしいタッチの映画でしたね。
    ところがキャプラはこれが忘れられなくて、もういっぺんつくったんですね。『ポケットいっぱいの幸福』と言う題で。とういう訳でキャプラが如何にこのストーリーが好きだったか、で、この話が好きだったか、一日だけでもいいから貴婦人にしてやるというこの話にフランク・キャプラが参って、自分で二度も映画にしたところで、この作品は注目作品ですね。

    【解説:淀川長治】