ドン・ファン
  • 原題:DON JUAN
  • 監督:アラン・クロスランド
  • 脚本:バイロン・ハスキン
  • キャスト:ジョン・バリモア

  • 製作年:1926年
  • 製作国:アメリカ
  • ジョン・バリモアの『ドン・ファン』。これは、ただの『ドン・ファン』とは言わないのね。ジョン・バリモアの『ドン・ファン』と言ったのね。

    そのぐらいに、ジョン・バリモアはもう、一番の美男子、一番の有名な人だったんですね。で、ジョン・バリモアをキャメラマンが撮影する時、あるいは、スナップで、撮影者が、新聞記者の写真屋ら来た時に、ジョン・バリモアは必ず左側の顔を、見せたんですね。自分の顔で、一番いい所どこか?ちゃんと知ってたんですね。そのぐらい、ジョン・バリモアは、自分というものを、見事に研究してたんですね。そのぐらい、ジョン・バリモアのプロフィールには、横顔というのは、もう有名な、有名な、話題になってたんですね。

    で、ジョン・バリモアはもうご存知の様に、ライオネル・バリモアそれから、あらゆる兄妹全部、舞台の一級、第一級の役者ですね。で、バリモア家というのは、もう別名、ロイヤルファミリー・オブ・ブロードウェー。

    で、ジョン・バリモア一家の事を、映画にした映画もあるんですね。『名門芸術』って言う映画がそうですけど。これで、バリモアの一家の事を、映画にしたんですね。で、お母さんも、エセル・バリモアも、それから、その他、兄妹全部、役者ですね。だから、舞台、舞台、舞台、ジョン・バリモアいうのは、舞台の中の、もう有名な、有名な一人ですね。

    だから、ジョン・バリモアの実写、実写と言ったらおかしいけど、伝記の映画観ると、この、お母さんが8時になったら、パッと起きあがっちゃうんですね。「お母さん、何にも用事無いじゃないの。」「いや、8時だもの。」8時に舞台が開くんですね。今だに、おばあちゃんになっても、8時になったら、シャッと身体がまっすぐになるんですね。 そういう、バリモアの一家の舞台の、役者の一家が良く出てましたが。

    そのジョン・バリモアが出てる、『ドン・ファン』で、このドン・ファンは女たらしですね。女を誘惑するんですね。そういう意味で、ジョン・バリモアにもってこいなんですね。で、ジョン・バリモアの当たり役でね。『ドン・ファン』ていうのは。そういうふうなわけで、ジョン・バリモアの『ドン・ファン』は今、観るのはとっても懐かしいですね。

    で、同時に、この『ドン・ファン』は、何度も、何度も、映画にしようとしましたが、ジョン・バリモアぐらいの綺麗な美男子がいないから、なかなか映画にならなかった。ところが、ダグラス・フェアバンクス。 あの立派な、『怪傑ゾロ』ですか?あの有名なダグラスが、これを映画にしようとしたんですね。でも、映画になるか、ならないかわからない。という、面白いシナリオで、ロンドンフィルムが作りましたけど。

    ドン・ファンが亡くなった。そっから始めるんですね。実は生きてるんだけど、亡くなった。で、「俺の葬式は、どんな葬式になるだろう?」いうのが、ダグラスの、『ドン・ファン』ですね。そうして、木に登って、お葬式見てると、ぞろぞろ、ぞろぞろ、女がいっぱい泣きながら、ぞろぞろ、、、もう女が泣きながら、泣きながら、お葬式してるんですね。「おー俺は、こんなに有名だったんだ。女にこんなに、もてたんだ。」というのが、ダグラスの『ドン・ファン』でしたね。そうして、やがてお葬式が済んで、三月目に改めて、「自分が、実は、ドン・ファンだったんだよ。」とみんなの女の前で、言いに行くんですね。で、みんなが、ドン・ファンを、この女を、この男やったゆう事を、気がつかないんですね。もっと綺麗人だったよ。もっと美男子よ。あんたみたいな人じゃないよ。とみんなに、ささやかれて。がっかり、がっかり、俺は本当に、ドン・ファンなんだよ。という所で終わる、このダグラスの、『ドン・ファン』も面白かったですね。

    けれども、何しろ、ジョン・バリモアの『ドン・ファン』これは、もうひのき舞台。もう、ジョン・バリモア以外許されないくらいの作品ですよ。それを、今、みなさんがご覧になったら、見事に、ジョン・バリモアという人がどんな人か、わかりますね。後に、ジョン・バリモアは色んな映画にでましたけど、『グランド・ホテル』これで、美男子の、美男子のジョン・バリモアが落ちぶれて、宝石泥棒になるんですね。落ちぶれて。それで、グレタ・ガルボのグルシンスカヤという、バレエのバレリーナ。その部屋に入っていくんですね。ところが、このバリモア、色男。なかなか芝居気たっぷり。というのは、バリモアを、まあ、風刺しているんですね。

    そして、このバリモアの宝石泥棒が見事に芝居するんですね。「私は、あんたのファン、あんたのファン、あんたが、オランダが行った時も、あんたが、スウェーデン行った時も、いつでもあんたの舞台を絶対見逃さなかった。あんたの『椿姫』、あんたの『マノン・レスコウ』全部、観ました。もう、せりふも覚えています。あんたこそ、私の命!私の命!あんたみたいな人がいなかったら。私はあなたが、生きている間に、私はあなたの、本当の、神様みたいな、あなたに、もう夢中になっているんです。あなた、どうか、長生きして下さい。」と、言った時に、ガルボが、「もういっぺん言って下さい。」その相手が、ジョン・バリモアだったんですね。

    あの美男子が、そんなことを、言った事も有るように、もう面白い、シャレ言うのか?そういうとこで、ジョン・バリモアという人を使いましたね。で、バリモア、そんなに有名な美男子。ハンサム、ルドルフ・バレンチノ、あれとは全然、違った意味で、本当の、もうどういうのかしら、

    鴈治郎ですね。中村鴈治郎です。昔の。あんな人だったんですね。そういう意味で、この『ドン・ファン』、バリモアの『ドン・ファン』は。わざわざ、バリモアの『ドン・ファン』と言ったくらいですね、さあ、みなさん、この18番、この、バリモアの18番の、オリジナルの『ドン・ファン』を観て下さいね~。

    【解説:淀川長治】