ハレルヤ
  • 原題:HALLELUJAH!
  • 監督:キング・ヴィダー
  • 脚本:キング・ヴィダー
  • キャスト:ダニエル・L.ヘインズ/ニーナ・メイ・マッキニー

  • 製作年:1929年
  • 製作国:アメリカ
  • 『ハレルヤ』 これを、今、ご説明するのは、とっても、幸せですね。これは、トーキになった時、昭和4年か、3年頃ですね。

    その頃に、キング・ヴィダー と言う監督、あの、『ビック・パレード』 『シナラ』 『街の風景』 良い監督ですね~。

    キング・ヴィダー は、映画詩人ですね。その監督が、初めて、自分で、『ハレルヤ』 を、考えたんですね。トーキになった時に、何考えたか? たら、トーキになったら、一番勉強して、皆さんに教えられるのは、アメリカが、教えるのは、あのブラックのメロディ、ブラックの歌、あのブラック、あの黒人の世界、あれが、一番良いと思ったんです。キング・・ヴィダーが。

      一番、キング・ヴィダーが、あの黒人の美しさ、あの黒人のブルース、可哀想さ、それを見せるのが、一番いいんだ!言うんで、『ハレルヤ』っての作ったんですね。けれど、一般の人は、『ハレルヤ』いうの解らないし、もう、全部黒人です。白人、一人も出ないんですね。だから、日本では、公開は中々出来なくて、東京の有楽町の朝日会館で、そこが一日だけ、『ハレルヤ』やったのね。後は、やらなかったのね。商売ならないと。端から、端まで、全部黒人ですね。キング・ヴィダーは、こんな映画作ったんですね。アメリカでも、こんな映画無かったんですね。全部黒人。

    で、これ観ますと、黒人が、もう本当に、リズムの、リズムの、本当のリズムの人間って、わかりますね。なんかゆうと、身体が揺れますね。なんかゆうと、足踏みしますね。で、子供が、もう、生まれて間もない、ちっちゃい子供が、もう初めから、タップダンスやりますね。タップダンス教えて無いのに、勝手に身体から、タップダンスやりますね。

    だから、あの、アメリカの音楽、アメリカのジャズ、アメリカの音楽は、本当は黒人から、生まれたゆうことが、はっきり、わかりますね。

    どんなに、リズムに合わせて、綺麗に踊るか? 歌うか? それが、良くわかりますね。で、これは、ニーナ・メイ・マッキニーという有名な、有名な黒人の、スターが出てくるんです。この黒人は、レビューのスターですけど、怖い、綺麗な女です。誘惑する女ですね。それに、ダニエル・L・ハインズが出るんです。これがね、『ショーボート』の、ジョーやった人ですね。舞台で、これがやるんですね。これが、真面目な、真面目な男で、綿を商売にして、綿を摘んで、街に持って行って、お金できたんですね。ニーナ・メイ・マッキニーのこの酒場の女が、誘惑するんですね。さあ~、その誘惑する所が上手い事!その度に、音楽がどんどん、どんどん流れてくるんですね。まあ、綺麗ですね。その音楽いいですね~。

    片っぽの村では、この息子が帰ってくるので、喜んで、喜んで、みんながコーラスやってるんですね。その、黒人のコーラスも凄いですね~。キング・・ヴィダーが惚れこんだんですね。このメロディーに。この黒人のこのメロディーに。もう、本当に夢中になったんですね。

    そうして、この、ダニエル・L・ハインズという人が、もう真面目なのに、このニーナ・メイ・マッキニーの、この酒場の女に、ひっかかっていくですね。だんだん、騙されていくんです。どんどん、どんどん騙されるんですね。その騙される所の、ニーナ・メイ・マッキニーの誘惑が、凄いんですね~。ダンス、ダンス、ダンス、歌、歌、歌、その間も、どんどんジャズのメロディーの基みたなのが出てきますね。そうして、踊って、踊って、踊ってるうちに、とうとう金、全部巻き上げられるんですね。巻き上げられた時に、この男は初めて、このニーナ・メイ・マッキニーに、情夫があって、その情夫とニーナ・メイ・マッキニーが、共謀して俺の金、取ってく事が、わかってその男を、探すんですね。その男を、探して、探して見つけて、追っかける所が凄いね~。

    このキング・・ヴィダー 大得意の移動撮影ですね。

    『ビッグ・パレード』で、キング・ヴィダーは、どんなに移動撮影、見事に見せたかわからない。それと同時に、この男が、その女の情夫の男を、追っかけて、追っかけて、追っかけて、男はどんどん逃げる、逃げる、逃げる。川の中に入る。浅い川ですね。 そうして、ジャブジャブ、ジャブジャブ、ジャブジャブ、水の中追っかけてく。逃げる、追っかける、逃げる。ずーっとキャメラ移動しますね。凄いな。このあたりのキャメラ移動凄いね~。

    と言う訳で、非常に黒人のこの哀しい、哀しいお話しなんですけど、中で『ハレルヤ』のこのメロディー、このお葬式のメロディーとか、あるいは色んなメロディーが、どんどん流れて、『ハレルヤ』は、黒人の本当のメロディーを、トーキが初めて紹介した大作ですね。キング・ヴィダーが。

    キング・ヴィダーみたいな、この『シナラ』の優しい監督が黒人のメロディーを初めて、映画に入れたのは、最高ですね。で、アメリカでオール黒人の映画は初めてですね。昭和元年頃ですか、こんな映画作った。トーキになって作った。しかもキング・ヴィダーが作った。これが評判でしたね。

    で、『ハレルヤ』このハレルヤの中で、このニーナ・メイ・マッキニーが、酔っぱらって喜んで、“セントルイス ブルース”歌いますね。そのあたりの“セントルイス ブルース”の歌い方が、本当の黒人が歌うんですから、見事ですね、オリジナルですね。

    このあたりに、この映画の、本当の黒人の歌い方、黒人のムード、“ハレルヤ” “ハレルヤ” “ハレルヤ”。哀しい時の歌、喜びの歌、そんなんが全部入ってる所が、この映画のキング・ヴィダーが狙ってる、黒人の美術、黒人の芸術、これが溢れた『ハレルヤ』名作ですね。

    【解説:淀川長治】