ロイドの要心無用
  • 原題:SAFETY LAST!
  • 監督:サム・テイラー/フレッド・ニューメイヤー
  • 脚本:
  • キャスト:ハロルド・ロイド/ミルドレッド・デイヴィス

  • 製作年:1923年
  • 製作国:アメリカ
  • ハロルド・ロイド、ご存知ですか?ハロルド・ロイドの『ロイドの要心無用』のお話しをしましょうね。

    アメリカにはチャップリン、キートン、そうしてロイド、これが居たんですね。これがもう有名なコメディのスターですね。ところがキートンはぼんやりした男、チャップリンはホームレス、それでその頃のドタバタ喜劇はみんなホームレススタイルのボロボロの服を着た連中が主役しましたね。ところがハロルド・ロイド言う人は初めから眼鏡をかけて出て来たんですね。眼鏡をかける言う事は映画で一番いけない事。眼鏡は硝子があってピカピカ光るからライトに光られたら困るから絶対にスターは眼鏡をかけませんでした。ところがロイドはそれを逆手に取って自分で眼鏡をかけて出て来たんですね。個性を持たせる為に。ところがロイドはちゃんと硝子を入れませんでした。枠だけですけどお客にはその硝子は分かりませんから本当にはまってると思いました。だからロイドは自由勝手に見るけれども反射しませんでした。そのロイド、眼鏡をかけたコメディアン、ドタバタ喜劇。

    さあこれは眼鏡をかけているからホームレスとか、放浪していく役はダメですね。全部都会劇ですね。全部デパートとかモダンなモダンな社会の中のスターですね。それが又売れたんですね。で、ロイドの映画みんな都会ですね。

    田舎の話、あるいはドタバタの本当の西部の話が多いコメディの中でこのロイドだけは大都会の映画ですね。それが良いんですね。しかも相手役がみんな美人なんですね。それとロイドの映画は面白いんですけど一番大事なの事はロイドもアメリカの本当のスピリット、精神、それをあぶらせる俳優ですからロイドの場合はいつでも“カム&ゲット イット!”やったらやれる!そういうな役が多いんですね。で、ロイドの映画は全部それですから、この『ロイドの要心無用』はそれの塊ですね。やったらやれるんだ!だからもう1階から2階上がる時に怖がって恐がって高所恐怖症のロイドが、どうしてもどうしても6階の上まで上がらなくちゃならない。その1階、2階、3階、4階と上がるまでのその面白いスリル、サスペンス見事な物で1階ごとに見事にハラハラさせるんですね。この『ロイドの要心無用』これは見事なロイドの代表作品ですね。しかもロイドがいつも言ってる事はやったらやれる!やればやれる!これをいつも思わせるんですね。

    ロイドの一番面白いのはこの『ロイドの要心無用』。これが一番良いですけど。ところでね、ロイドが日本に来たんですよ。で、私はロイドと会ったんです。ロイドは僕の名前を書いたサインをしてくれましたけど、その時にロイドに言っていいか悪いけど僕は本当に仲良しになった気持ちがして、「ロイドさん、あんたは右手か左手か知らないけど、中指が1本無いでしょ。」と言ったら「オーライ」と言いました。つまり僕は素直に言ったから見せてあげると見せたんですね、指を。中指がひとつ無いんですね。あら!と思いましたが、これはオープンでアクションやっている時にそのセット係が間違って爆弾のある位置を間違ったからバーンと破裂して自分はその中に転げこんで指一本失ってたの。「だから僕の映画ご覧なさい。観たらいつでもポケットに手入れてるでしょ、片手を。あれはね俺の指を隠しているんですよ。」そういう事をはっきりロイド言ったんですけど、ロイドはいかにもやっぱり映画と同じ様にサラリーマンで役者臭くなくて見事な見事な俳優でしたよ。



    【解説:淀川長治】