吾輩はカモである
  • 原題:DUCK SOUP
  • 監督:レオ・マッケリー
  • 脚本:バート・カルマー/ハリー・ルビー
  • キャスト:グルーチョ・マルクス/チコ・マルクス/ハーポ・マルクス/ゼッポ・マルクス

  • 製作年:1933年
  • 製作国:アメリカ
  • 『吾輩はカモである』面白い題名ですね。

    『DUCK SOUP』最も上等なスープですね。そういう題名でどういう映画か?映画はサイレント、サイレント、サイレント。ところがトーキになってきました。さあトーキになったらハリウッドが慌てました。どうしよう、どうしよう、どうしようと慌てました。だからニューヨークの芸人をどんどん迎えました。それも第一、ニューヨークの第一級の芸人をどんどん入れました。その中に『吾輩はカモである』の兄弟が入ってきました。これはトーキで無いと出て来ない映画の主役達ですね。

    『吾輩はカモである』ユダヤ人の兄弟です。そのニューヨークに生まれたユダヤ人の兄弟。それが芸人になりまして、みんなが見事だった。さあ誰が誰か。グルーチョ、ハーポ、まだ他にゼッポ、その兄弟達がみんな芸人なんですね。本当の兄弟ですよ。芸人になって出て来るんですけど、その凄い事、面白い事、みんなが本当の舞台の芸ですね。

    だから映画じゃ無いんです。映画じゃなくて舞台の会話、舞台の動作、それがそのまんま映画になって出て来るのでこれが又パラマウントの呼び物になりましたね。例えばハーポ、これは全然物言わずですね。物言わずだけどもう最高の演技見せるんですね。さあそういう訳でグルーチョはしゃべって、しゃべって、しゃべって、しゃべりまくるんですね。みんなそれぞれ芸持ってるんですね。その兄弟の芸が圧倒するほど見事なんですね。けれどもこれは映画ではありません。これは舞台芸ですね。舞台芸だけれどもその頃にニューヨークのそういうバラエティ。そういう安芸人の面白い面白いコメディ観た事無いから、いかにもみんなが喜んだんですね。

    マルクス兄弟、しかもマルクス兄弟なんて言うからどんな怖いものか思ったらもう滑稽もいい所なんですね。そういう訳でこの連中の会話、動作がびっくり仰天させたんですね。で、そういう訳で例えばその、グルーチョなんかが居りましてその綺麗な奥さんとしゃべっているんですね。で、綺麗な奥さんはベアーの事、熊の事を一生懸命に言ってるんですね。「あの熊はね、立派でしたね。」ベアーって言うのはねチャンピオン。拳闘のチャンピオンでベアーって言うのが居るんですね。それで片っぽのグルーチョは「あいつはな、女に手が早いんだよ。」「あら、あの熊そうなんですか。」なんて言う所から話がめちゃめちゃに変わっていくんですね。

    そういう辺りがとっても面白くて奥さんは「まあ、あの人は立派な人ね。」と言ったら「あれは○○になったら危ないんですよ。」奥さんはびっくり仰天するんですね。そういう会話がもうどんどん出てきて事にハーポなんて可笑しくて可笑しくて頭にくちゃくちゃくちゃくちゃいっぱい毛があの、銀髪があるんですけど、それに鳥の巣を作るくらいの面白い所が有りましてそうして色々ありまして、「俺はね、コーヒー飲みたいな。」なんて相手が言ったら「おう、出すよ。」と言ってポケットからコーヒー出してお皿の上に温かいコーヒー出すんですね。「お前、コーヒー出るの?」「何でも出ますよ。」「そしたらねお前ね、クジラ出せるか?」と言ったら「はい、クジラ出します。」と言って大きなクジラ出そうとするので相手がひっくり返る、そういう風なもう何とも知れん不思議な不思議なコメディですね。これはニューヨークの舞台でないと見られないそのコメディをどんどんどんどん見せてパラマウントはマルクス兄弟で大変な評判になったんですね。

    で、この他『DUCK SOUP』『吾輩はカモである』これを第一作にしてどんどんどんどん作りまして、もうお客さんはみんな笑って、で、グルーチョ言う人は最初舞台出る時に慌てて出た時に髭を落としたんですね。いつも髭付けてるのに。それで傍にあった筆でザーッと墨で髭つけたんですね。それが評判になってグルーチョ言うのはもう映画の中でも、いつでも髭をつけて出てくるんです、描いた髭で。それで評判になって、グルーチョもハーポもゼッポもみんなそれぞれの芸持ってるんですね。それぞれの芸持ってしかもみんな本当の兄弟なんですね。で、それでいかにもこのユダヤ人兄弟にお客さんが大喝采した。その大喝采したニューヨークの大喝采した芸人をパラマウントは映画の中で紹介してパラマウントらしい感覚でこのマルクス兄弟は有名になりましたね。

    で、マルクス兄弟これが好きだ言う人は本当にいっぱいいらっしゃる。でもこれは映画のコメディではありませんよ。映画のコメディとして代表的な作品とおっしゃっていらっしゃるけどこれは舞台のコメディ。舞台の人ですね。そこらが面白いんですね。



    【解説:淀川長治】