邂逅(めぐりあい)
  • 原題:LOVE AFFAIR
  • 監督:レオ・マッケリー
  • 脚本:
  • キャスト:アイリーン・ダン/シャルル・ボワイエ

  • 製作年:1939年
  • 製作国:アメリカ
  • レオ・マッケリー監督の名作の『邂逅』、この話をしましょうね。

    この映画、後にまた映画化されましたね。私はこの映画観て、本当に鬼の目にも涙、もう思わず涙が落ちました。というのは、奇麗な奇麗なお話なんですね。

    一番最初は、シャルル・ボワイエとアイリーン・ダン、これ演りまして、レオ・マッケリー、奇麗なお話。二度目はケーリー・グラントとデボラ・カーでしたね、見事な映画。これはね、お船の中でね、全然知らない同士が「こんにちは」「こんにちは」、昔は船は三日も四日も五日も航行しますね、そして知り合いになっちゃった。そうして話してるうちに、一人は画家だったの、で、片っぽが「また、あんたとお会いしたいですねえ」と言ったの。

    そういう訳で、まあ非常に仲良くなったの。
    けれども、右と左に別れて上陸しました。でも約束したの、二人がね、「いっぺん会いましょうね、あのエンパイアステートビルの上で会いましょうね」と言ったの。

    そうして男は喜んで、その時間に行ったのね、12時15分に。女の方も喜んで、12時15分にそこへ行くんだいうんで飛んでいったんですけど、そのエンパイアステートの足元で自動車がぶつかっちゃって、この女の人は足わるくして、上へ上がって行けない、病院へ行っちゃったのね。

    「あたい、むこうへ行きたいの、あの屋上へどうしても行きたいんだ」言うんだけど、「だめです、あんただめです」と言うので行かれなかった。
    上では一時間、二時間、三時間、四時間、五時間、待ったのね、とうとう来ないから、がっかりして帰って「ああ、とうとう来なかったなあ、あの人は口先だけだったなあ」いうようなとこ、あったんですねえ。

    そういう風な映画、最後はまた再会するんです。二度目の方のデボラ・カーとあのケーリー・グラント。これもその通りの映画だけれど、同じ監督ですから、奇麗な、奇麗な映画になったのね。これも涙出ましたよね、これも良かった。

    みなさんもうご存知でしょうけど、二人が会わない、男の方はがっかりした。女の方は「会いたい、会いたい」思うのに会えない、足が悪くなっちゃった。男は「やっぱりあの人、来なかったなあ、がっかりだなあ」と思って、そしてそれが最後の最後に再会するところ、雪の日に、凄かったなあ。

    という訳で、この映画は見事な愛の映画。けれどもメロドラマというには、あまりにも上等な映画でしたね。それで皆さん、この『邂逅』をご覧になったと思いますけど、これ又きっと映画になるでしょう。その位美しい映画でした。

    最後の方で、奇麗なあの女の人はどうしてるだろうか思ってました。そうすると、この絵描きが絵の展覧会で絵を出したの。その時に女の人が絵を買って帰った。「あら、ありがたいな」と思いました。
    それからしばらくして、その彼女に会った時に、彼女は足が悪くって椅子に座ってました。
    「そうか、あんたやっぱり足が悪かったなあ」思って、ずーっと上見たら自分の描いた絵が飾ってあったの。「あの時来たんだね、あの時来て買ってくれたんだね」いうようなラストシーンが確かあったと思います。あれが凄かったな、いいラストシーンでしたね。

    という訳で、『邂逅』は、みなさん何度観ても涙があふれますよ。
    ところでアイリーン・ダンの事を、一言いっておきましょうね。
    この人は上品で非常に奇麗な女の人、けれどもいつも何かあわれを、どっかに匂わせる女の役が良かったんですね。

    で、アイリーン・ダンの最もの代表作品は『裏町』、これが良かったんですね。
    これは大事にしてもらった旦那さんに、二号さんですね、大事に、大事にしてもらったけど、旦那が死んじゃたんですねえ、だからお葬式行けないんですねえ、二号さんだから。

    それで、かげに隠れてお葬式拝んだんですね。そういうかわいそうな役演ったんですね。
    ところがその息子、その金持ちの息子が、二号さんがいた事がわかったんですね。
    調べてアイリーン・ダンの扮してるその女の所に訪ねて行ったんですね。
    「あんたですか」と言ったの。

    「はい、私が、あなたのお父さんに、とってもかわいがられたんですよ」、「そうですか。ところであんたは、いくら貰ったんですか」、直接に冷たい事言ったんですね。
    「あんたは、お父さんから毎月いくら貰ったんですか」「これだけなんですよ」、見せたの、それが安い値段なんですね。
    「毎月たったこんだけなのか、あんた、こんだけしか貰わなかったのか」言うところが、その息子とそのアイリーン・ダンが、いかにも哀れな顔が、二人の顔が良かったですね。

    アイリーン・ダンというのは、そういう役で、非常に優しくて奇麗くて、しかもコケットな役を演ったんですよ。

    【解説:淀川長治】