男性と女性
  • 原題:MALE AND FEMALE
  • 監督:セシル・B・デミル
  • 脚本:
  • キャスト:グロリア・スワンソン/トーマス・ミーアン/ライラ・リー

  • 製作年:1919年
  • 製作国:アメリカ
  • これから『男性と女性』の話をします。
    『男性と女性』。なつかしいなあ、本当に。
    『男性と女性』を今お部屋でご覧になれたら、どんなに良いでしょう。

    大正8年、9年ころ、日本で封切ました、僕は10才の頃。
    これ、セシル・B・デミルの代表作品ですね。
    皆さんは「十誡」とか、ああいうのでデミルをご存じでしょうけど、デミルは社交界のおもしろい、おもしろいお話がいつも評判で、あのイタリアのフェデリコ・フルェリーニ、あの人なんかデミルのまねしてるんですよ。

    というわけで、『男性と女性』。
    あ〜、これは思い出がいっぱいあって、どうしゃべっていいかわかりませんね。
    私、11才の頃、これを活動写真館で一人で観たんですね。
    あんまり面白いから、じっとしてられなくなって、すぐに事務所に飛んで降りて、2階の1等で観ていましたから、飛んで降りて事務所から電話かけました。
    「お父さん、お母さん、お姉さん、お姉さん、この『男性と女性』すごいんだよ。グロリア・スワンソンすごいんだよ。観にいらっしゃい、観にいらっしゃい」。
    それから半時間たったら5人来たんですね。

    お父さん、お母さん、お姉さん2人、おばあちゃんと来たんです。ぞろぞろ、ぞろぞろ。
    その間に、僕はちゃんとたのんで座布団を置いときましたから、2階の正面。
    そこでもう一回、この『男性と女性』、観たんですね。

    『男性と女性』。この主役はグロリア・スワンソンなんですね。
    みなさん、グロリア・スワンソン、ご存じですか?『サンセット大通り』の主役ですね。
    『サンセット大通り』がすんだ頃に、私はアメリカに行ったんですね。
    そして、グロリア・スワンソン自身に会いましたのね。
    で、「『男性と女性』よかったねえ。これはすごかったよ。」と言ったら、「淀川さん、そんな古い話しないでくださいよ。」と言われたくらいなのね。

    これはご覧になったら、びっくりする面白い映画で、デミルとは何か、グロリア・スワンソンとは何かがわかる映画なんですね。
    それをここでしゃべったら1時間半以上しゃべりますから、一言でいいますと、豪華船に大金持ちのすごい連中、お父さん、お母さん、お姉さん、召使い、それから執事、みんな乗って遊びにいったんですね。
    それがハリケーンで船がひっくり返って、みんな無人島へ着いちゃったんですね。
    みんなそこで、どうしよう、どうしようと思った時に、そのお嬢ちゃんだけが、グロリア・スワンソンだけがいないのね。

    どこ行ったんだろう?グロリア・スワンソンは、船が傾いて、ひっくり返った時に、そのドアの所にピアノがひっついちゃって離れないから外に出られないんですね。
    水がどんどん入ってきて、お嬢ちゃん、首のあたりまで水になったんですね。
    助けてくれるにも、人がいないんですね。

    それを、その番頭さんが、「あっ!あの方がいない!」と言うんで、飛び込んでいって助けるあたりが面白いんですけれどれも、この映画の面白いことは、映画のスターが10人くらい、ずーっと出てるんです。
    それがすごいんです、みんな一流女優、男優なんですね。
    そうして結局、みんな無人島に流れてきて何にもできない。

    どうしたらいいか?たき火ができない。
    どうしたらよいか?困った時にその番頭が自分の腕時計を外して、太陽光線にあてて、火をだして、それからが原始生活。
    今までの豪華生活が、原始生活になりまして、ロビンソン・クルーソーになりまして、そこでは執事、番頭さんが一番偉い人になったんですね。

    番頭さんの恋人は女中さんですね、そこのね。
    ところがそのお嬢ちゃんが、番頭さん好きになってきたんですね。
    いろいろ、いろいろ話があって、番頭さんと仲間、それからまた、お嬢ちゃんと女中さんと、いろいろ階級がそこでえらいことになってきて変ってくるんですね。
    デミル一流の面白い映画。

    このなかで、このグロリア・スワンソンが木の実をとりに行くんですね。
    木の実をとりに行ったらそこに野獣がいたんですね。
    その野獣が飛びかかってくるようなシーンがあるんですね。
    びっくりしたら、その執事が、実はバビロンの時代にこんなことがあったんですよと話して、時代劇になるんですね。

    バビロンの女が敵に捉えられて、敵の王様が俺の妾になれって言ったときにツバかけたんですね、その大将に。
    こんな奴は許さない、ライオンの餌食にしてやる、と言うところからライオンの餌食になるシーンが出てくるんですね。
    奇麗な奇麗な真っ白なレースの着物きせられて、頭の冠が白孔雀の冠なんですね。そして悠々、悠々とライオンの餌食になりにオリの中にはいっていくところがすごいんですね。

    これをグロリア・スワンソンに言ったら、「あれはね、おかしかったのよ。ほんとはね、白い孔雀の冠なんていうのは縁起が悪いのでね、黒でするって言ったら、いや、白がいいですよってけんかしたことがあるんですよ。」
    そんなこと言われた『男性と女性』。本当にデミル、スワンソンの代表作品ですね。

    【解説:淀川長治】