會議は踊る
  • 原題:DER KONFRESS TANZT
  • 監督:エリック・シャレル
  • 脚本:
  • キャスト:リリアン・ハーヴェイ/ビリ・フリッチュ

  • 製作年:1931年
  • 製作国:ドイツ
  • ドイツ映画、エリック・シャレルの『曾議は踊る』。
    懐かしいですねぇ、立派ですねぇ、驚きましたね、この立派なのに。
    エリック・シャレルは舞台の有名な監督です。それで、ドイツ映画です。
    ドイツがこの頃いかに立派だったいうことがね、この映画観たらわかりますね。

    で、『曾議は踊る』、この映画の時に私はドイツいう国の音楽いうものにびっくりしました。
    映画がトーキーになった時に、アメリカ映画がトーキーになった時に、やがて昭和4年頃、ヨーロッパのトーキーがやってきたんですね。

    まぁ、ヨーロッパのトーキー、びっくりしましたね。
    アメリカは、もうみんなタップダンス、ダップダンス、タップダンスみたいな感じで、四十二番街みたいな感じで、みんなタップ、タップ、タップ、タップの映画が多かったんですね。
    で、ヨーロッパの映画来たんですね。
    ヨーロッパの映画、どんなトーキーか、どんな音か、昭和4年頃ですね、来ましたね、来ました時にフランスは『巴里の屋根の下』、ルネ・クレール、これ来たんですね。

    この時びっくりしたんですね。タップ、タップ、タップで僕ら喜んでね、みんなタップを打ってたんですね。
    その時に『巴里の屋根の下』は、「ラララーン、ラララーン、ララランランランラーン、ラララー、リララー、ララリーラリー、ラララーリラー」、ああいうメロディがきたんですね。

    フランスって綺麗だなぁ、なんだろう、シャンソン? そうか、これがシャンソンか。
    綺麗なフランスの、このメロディの流れに、リボンのように流れていくこのメロディにびっくりしたんですね。ヨーロッパの、フランスの、この音楽に。
    トーキーものはそういう事をしてくれますね。

    その時にドイツがやってきたんですね。
    ドイツ、一番最初にやってきたのは、『嘆きの天使』がやってきましたね、ディートリッヒの。フランスの柔らかいのに対して、『嘆きの天使』の方は「フォーリン、ラヴァーゲン、ネヴァー、ウォンテッド」。なんだかいかにもドイツ語ですね。
    うーんすごいなぁと思いましたが、これはディートリッヒが出てスタンバーグが監督した作品ですから、どっかまだちょっとアメリカ的な匂いがないことはないんですね。

    そうして続いて出てきた、『曾議は踊る』。
    これが本格的なドイツの音楽映画だったんですね。
    エリック・シャレル、舞台の監督が、いかに映画の中に音楽を盛り込んだかいうところにびっくりした映画でしたね。

    で、これはお話が、ナポレオン一世ですか、ナポレオンが負けたんですね。そうしてみんなが喜んだんですね、ヨーロッパ中が。「あぁ、もうこれで戦争が終わったよ」。
    それでみんなが集まって会議したんですね、ウィーンで。
    ところが、その会議がぜーんぶ、踊ったり、しゃっべったり、酒飲んだりする会議だったんですね。

    そういう時代の、おもしろい、おもしろい、『曾議は踊る』。
    そういう時代を映画にしたんですね。
    けど、これで驚くのは、カメラがすごくて綺麗でドイツいうものがどんな立派かいうことを絢爛と見せたんですね。

    一人の若い娘がおりまして、それがロシアの若い皇帝、それがあんまり綺麗なので、馬に乗ってるときに下からばぁーっと花を投げたんですね、

    ところがそれが、爆弾が投げたことになったんですね。えらい事になって、それで調べられたんですね。町の娘がひっぱり出されて来たんですね。
    リリアン・ハーヴェイ、かわいい女の子です。
    それでひっぱり出されて、お尻を24回叩く刑罰受けたんですね。

    それを助けたのがロシアの皇帝でしたね、若い皇帝ですね。
    やがて話が変って、そのロシアの皇帝と知らないで、ロシアの兵隊だという事になって、そのリリアン・ハーヴェイの若い娘ととっても仲良くなったんですね。

    ところが、それがロシアの皇帝だという事がわかってびっくりしたんですね。
    「あの人、ロシアの偉い人なの」とかいう事なったんですね。
    それで、「そうだよ、おまえ、いっぺん俺の邸宅に来いよ」いう手紙出したんですね。
    で、リリアン・ハーヴェイの町娘が、ひっくり返ったんですね。
    「えっ、あのお屋敷に行くの?えぇ、私あんな所へ行くの?」というのでびっくりしてね。

    馬車に乗って行くところ、そこはカメラの移動がすごくてね、歌が上手くてね、「ただ一度だけ」という歌なんです、もう驚くような音楽ですね。
    そうしてカメラは、そのずーーーっと走っていく馬車と一緒に、その馬車の外側、映るんですね。
    野原、畑、ずーっと映りながら、一生懸命「ただ一度だけ」という歌を大きな声で歌っているのに合わせて、そのずーっと続く景色の中の人達がみんな合唱するんですね。

    いかにもおもしろい、映画のオーケストラですね、映画のシンフォニーですね、それが溢れている『曾議は踊る』。
    これはアメリカ、フランス、ドイツがあって、ドイツの本当の音楽映画でしたね。

    『曾議は踊る』。これは本当にドイツ映画の代表的名作ですね。
    エリック・シャレル監督、リリアン・ハーヴェイ、フィリップ・ビリ・フリッチュ。
    この見事な、見事な、ドイツの最も良かった頃の作品ですね。

    【解説:淀川長治】