カリガリ博士
  • 原題:DAS CABINER DES DR.CALIGARI
  • 監督:ロベルト・ヴィーネ
  • 脚本:ハンス・ヤノウィック
  • キャスト:ヴェルナー・クラウス/コンラート・ファイト

  • 製作年:1919年
  • 製作国:ドイツ
  • 『カリガリ博士』、おもしろい名前ね。『カリガリ博士』、これ、ドイツの表現主義の頃の最も代表的な作品ですよ。

    舞台が背景が、全部不思議な感覚の絵ですね。もう全部カキワリですね。けどカキワリと言えませんね、ドイツ美術ですね。ドイツの本当の、この表現主義の、すごい美術の中で事件が起こり、人物が出てきますね。その人物がその表現形式の絵画の中で見事に収まっていますね。これはヴィーネと言う監督の見事な名作です。

    カリガリ博士という不思議な男がいるんですね。この男がチェザーレとか言うね、眠り男がいるんですね。その男を使ってね、殺人事件を起こすんですね。怖い映画ですね、ちょうど言ったら吸血鬼みたいなもんですね。

    この『カリガリ博士』が、次から次へと眠り男を使って殺人事件を起こす。さあ、この『カリガリ博士』は何だろう、何だろう、思ううちに、最後の最後は『カリガリ博士』が精神病院に逃げ込んで行くようなストーリーですね。

    ストーリーは、私はかすかに覚えてるだけですけど、この表現形式ですね、これは凄い。これはドイツでないとやれない、アメリカじゃとってもこんな大胆な事やれない。フランスでもやれない、ドイツですね、ドイツは、こういう頃、こういう時代に最もモダンだったんですね。最もいわゆるハイカラだったんですね。

    『メトロポリス』なんかもありますけど、これは本当に絵画がそのまま映画になってるんですね。
    その表現形式、不思議な不思議な感覚、これは後にいろんな国が真似しましたけど、やっぱりドイツが最初のオリジナルですね。
    で、この『カリガリ博士』はそういう意味でも怖いのね。

    この男が、なんとも知れん男なんですね。そうして眠り男を使って人を殺していくのね。話自身も、なんとも知れん、怖いですね、吸血鬼ですね、吸血鬼だけれども、もっとなんとも知れんリアリズムあるんですね。その背景が絵のくせに、リアリズムあるんですね。

    この眠り男を使って人を殺していくいうところがまたおもしろくて、眠り男が『カリガリ博士』の言う通りになっていくんですね。
    これに有名な俳優が出てるんですね。『カリガリ博士』がウェルナ・クラウスで、チェザーレがコンラート・ファイトですね。
    みんな名優ですね、名優が出てこの映画は生きていきますね。

    ドイツ映画、ドイツというものがこの頃どんなに文化的に優れていたか、芸術的に優れていたか、ドイツという国がどんなに立派だったか、そういう時代に、デートリッヒが生まれて、デートリッヒは育ったんですね。

    だから、デートリッヒが今でも、アメリカ行っても粋なんですね。なんとも知れん、粋な女になったんですね。これはドイツの文化を吸っていた からですね。
    ドイツ文化、これは本当に世界で最高の文化を持ってたんですね。モダン文化、表現形式、こういうものを映画に吸い込んで映画につくったいう事が驚きですね。

    ドイツ映画は『カリガリ博士』でこんなのつくったけれども、まだその他に、もうアニメでも見事なハイカラなの、モダンなのつくりました。

    みなさん『メトロポリス』ご覧になったら、あの人造人間、あれがのちに『スター・ウォーズ』で、いろいろと出てきますが機械人間がえらい違いですね。見事ですね、ドイツのこの人造人間はもっと凄いですね、美術的ですね。

    で、ドイツがこんな美術あったのに、どうしてドイツがそのすべてをなくしたか?ヒットラーですね、ヒットラーがその美術を全部消したんですね。
    そういう訳で、ドイツは見事な見事な国だったのにヒットラーで潰されましたね。

    今考えたら、この『カリガリ博士』、これ見て驚きましたね。
    衣笠貞之助なんかが非常にこれに影響されましたね。『狂った一頁』とか、いろいろつくりましたけど、この感覚は、とっても大胆なこの感覚は、もうこのドイツ映画以外つくれませんでしたね。
    『カリガリ博士』、不思議な、不思議な、見事なドイツ文化ですよ。ドイツ美術ですよ。

    【解説:淀川長治】