民族の祭典
  • 原題:OLYMPIA I
  • 監督:レニ・リーフェンシュタール
  • 脚本:
  • キャスト:

  • 製作年:1938年
  • 製作国:ドイツ
  • 『民族の祭典』これは本当に今考えてもぞっとするぐらい立派でしたね。そのオリンピック、ベルリンオリンピックの実写ですけど実写、それと言えないね。これが本当のニュースと言えないぐらいに劇的なんですね。凄いんですね。

    これもう『美の祭典』と言う続編作りましたけれど見事なんですね。で、これ観てますと勝負、勝ち負けの勝負どころかスリル、サスペンス以上にキャメラ、キャメラが凄い。キャメラが40台あったんですね。そうしてこのキャメラがもう見事に見事にその瞬間撮ったんですね。そうしてもっと凄いのは運動場に穴開けて地下から上向けて撮ったりしたんですね。だから走っていく男の脚、パーっと上がる脚も全部撮ったんですね。遠くから来る男、それが目の前で飛び越していくんですね。そういう凄い凄い場面撮って映画のシンフォニー、まさに映画のキャメラが本当にシンフォニー。キャメラだけで目がくらむくらいに良かったですね。

    しかもこの映画何と面白い事に日本の選手が出て日本の選手が勝った時には日本の旗がスーッと上に上がっていく所をちゃんと付け加えたんですね。そういう訳でこの映画は驚くべき、驚くべく、どう言うんでしょうか、実写の最高芸術だったんですね。で、この映画何て立派だと思ったらレニ・リーフェンシュタール言う人が女の監督がこれを総指揮したんですね。で、レニ・リーフェンシュタールと言うのはダンサーなんですね。で、昔『青の光』だとか色んなの出まして、そうしていかにも綺麗な美人だったんです。それがいつのまにかやめて映画の監督になったんですね。

    それでこの『民族の祭典』と続く『美の祭典』は本当に美しい美しいキャメラ、映画の芸術ですね。ところがこれをこんなにまで立派に仕上げたのは、誰がこれを応援したか?ヒットラーだったんですね。ヒットラーがもうレニ・リーフェンシュタールの為なら何でもしてやると言ったんですね。で、レニ・リーフェンシュタールはもう思う存分ヒットラーの命令であらゆる事したんですね。だからこの『民族の祭典』観た日本人は本当にドイツに酔っぱらったんですね。ドイツはこんなに美しいのか思ってびっくりした。これはドイツに傾いた見事に映画が本当に国民を動かした位の作品ですね。

    で、この『民族の祭典』出た頃、『美の祭典』が出た頃、日本人は全部ドイツに傾いちゃったんですね。「ドイツは偉い国だ!ドイツは立派な国だ!ドイツはええな。」と言うのでみんなドイツ語流行ったんですね。という訳で映画の力は怖いですね。で、これはこの映画観た後で日本はドイツと組みましたね、戦争で。日本人はそれは当たり前と思いましたね。それぐらいドイツに惚れ込みましたね。レニ・リーフェンシュタールの力は凄いですね。で、私はこれ観て驚いて何ていうキャメラは凄いか思いましたけど、後で、レニ・リーフェンシュタール言う人とヒットラー言う人がこれを作ったと思いますと少し嫌気がさしましたね。けれども嫌気を除けてこの映画の美しさ、映画の美は本当にこれこそ映画でしたね。

    【解説:淀川長治】