キング・コング
  • 原題:KING KONG
  • 監督:メリアン・C・クーパー
  • 脚本:
  • キャスト:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング

  • 製作年:1933年
  • 製作国:アメリカ
  • 『キング・コング』は、一体いつ、生まれたんでしょう。

    『キング・コング』、名前がいいね。コング言うのは、大きな大きなお猿さんですね。
    キング、その王様ですね。『キング・コング』、このタイトルがうまかったね。

    で、これはどうして生まれたか言いますと、昔々サイレントの頃に『ロスト・ワールド』、世界の終り、そういうような映画つくった事があるんですね。
    これが始めての、アメリカの超大作のトリックですね。大きな、大きな、ブロンド・ザウルスとか言う恐竜が出てきて、大きな、大きな恐竜同士が、食いっこするんですね。それを、粘土で作って、うまく、うまく動かして、本当に大きな大きな、そうゆう恐竜が出てくるような映画つくったんですね、『ロスト・ワールド』。

    それ観てお客さんがびっくりしたんですね。凄いなあ、ファースト・ナショナル、いうところがつくったんですね。わーっと思って、あんまり興行があたったもんで、それではもう一本つくろうか、と考えたのが『キング・コング』ですね。

    そして、この『キング・コング』、やっぱりトリックでつくったんですね。私は『キング・コング』があんまり凄かったので、それを作ったRKOへ行ったんですね。

    「『キング・コング』、あれ、良かったね、どんな大きなお猿ですか?」
    「いやまだあるんだよ」言うから、
    「あらっ、まだあんの?猿、あるんですか、どこにどこに?」とスタジオ行ったら、大きな大きな所に、大きなお猿がおんのか思ったら違うんですね。ほんのこんぐらいの、僕の体ぐらいのお猿が三匹、四匹、五匹、六匹いたんですね。

    「何なの、これ?」言ったら、
    「この一番大きいのが、淀川さんのこの体ぐらいで、あとはみんなちっさいの」
    「それがセットの中で、うまーく大きく見えるの」
    「で、一番最後に大暴れするんのが、淀川さんぐらいの大きさの猿なんです」
    だから、みんな小さいの。

    ところが見てると、スイッチ入れると指が全部動くの、指の一本一本が。こう、この先まで動くの。で、顔も目も動くの。

    という訳で第一回目につくった『キング・コング』、これがえらい評判になったの。お猿がかわいい、かわいい女の人を好きになって、それでびっくりしたんですけど、一番びっくりした事は、そのフェイ・レイの扮してる女の人の叫び声。
    この叫び声、「キャーーーー」言うのがね、ただ事やないぐらい叫びが凄かったのね、えらい評判になったの。

    そいでフェイ・レイいう女優は、それから後に叫び声の映画ばっかり出たのね。なんか、ギャングに追われて「キャーー」、そんなんばっかり出されて、叫び声の女優さんになっちゃったんですね。
    という事がありましたけれども、フェイ・レイが有名になったのは、この『キング・コング』でしたね。

    それから後に『キング・コング』は、みなさんがご存知のように、トーキーにもなりましたし、いろいろできましたけど、なぜこれがおもしろかったか?それは、怖い、怖い、怪獣ですね、怖い、怖い、巨猿ですね、大きな、大きな、怖い、怖い、巨猿が人を食い殺すんじゃなくて、かわいい、奇麗な女の人に、手の上に乗るような女の人に、夢中になって、夢中になって、愛を感じたいうところが評判になったんです。

    これがこの『キング・コング』の、最も大切なところですね。かわいい、かわいい女の人に、愛を感じたんですね、『キング・コング』が。それでこの『キング・コング』は、有名になったんです。

    これがもしも、暴れ廻って、暴れ廻って、地下鉄も自動車もひっくり返す、それだけで終ったらこんなに命が永くないと思います。
    とにかく『キング・コング』は愛のお猿さん。しかもそれが、かわいい、かわいい女の子を愛したのに、最後は無残に殺される。

    高い塔に上って行くその猿を飛行機からパンパン撃つ場面、今でもあるんですね。手で掴んで、飛行機を潰すとこ、あるんですね。
    そしてまた同じように、『キング・コング』が倒れるところ映してますね。倒れてバターンと倒れるところ。
    ああいうふうに、愛の、愛の巨猿が、大きな猿が倒れて死んじゃうとこが、いかにもかわいそうですね。

    『キング・コング』は、ただ大きいだけじゃなくて、そういう映画なので評判とりましたね。
    『キング・コング』、『キング・コング』、このタイトルが良かったんですねえ。

    【解説:淀川長治】