大樹のうた
  • 原題:APUR SANSAR
  • 監督:サタジット・レイ
  • 脚本:
  • キャスト:ショウミットロ・チャタージ/シャルミラ・タゴール

  • 製作年:1959年
  • 製作国:インド
  • サタジット・レイ、インドの監督ですね、カルカッタ生まれのね。
    このサタジット・レイの『大樹のうた』ですね。オプーはだんだん大きくなりましたね。大きくなって、やがて彼女を迎えることになりましたね、このあたりがいいんですね、お金持ちじゃないんですよ。

    オプーは教育家ですね。小さな家におるんですね。花嫁さんとオプーの仲のいいとこがとってもよかったなあ。金持ちじゃないんですね。兄弟、夫婦が一緒に寝てるんですね。そして奥さんの方が、新嫁の方が早く起きるんですね。
    オプーが寝てる間に、「おきるよ」っていうんだけど起きられないんですね。
    どうしたんだって見たらね、オプーが寝てる間に花嫁さんと自分の寝巻の紐を結んでたんですね。

    「まあ、やらしい、こんなことしてたの」なんて言って嫁さんが笑うとこあるんですね。まあ、日本の歌舞伎と同じですね。「恥ずかしいわ」って。
    そこで紐をはずして庭へ出て、コンロに火入れてごはんつくるところがいいんですね。そういうあたりの二人の仲のいいところ、だんだんオプーが大きくなるところが見事ですねえ。

    この映画『大樹のうた』、だんだん樹が大きくなって太くなって立派になるあたりがおもしろい。
    どこがどうと言えませんけど、この人の、サタジット・レイの映画、ちょうど日本の内田吐夢の作品とそっくりですね。見事にどんどん時代が変っていくところがいいですね。

    このサタジット・レイという人、私好きですけど、アメリカに行った時にこの人の映画一本やってたんですね。
    それ観たときに、ずーっとお客が並んでたんですね。僕も並んだんですね、ニューヨークで。そうすると、前から十番目の人が僕の方を見て「おいでおいで、ここへ入れてやる」なんて言って。そんふうに映画ファンがいっぱい並んでるとこを見たら、どんなにニューヨークでサタジット・レイが大事に尊敬されてるかわかりますね。

    そういう訳で、サタジット・レイという人はみんなに愛された人ですね。
    この人の作品で、どれもこれもいいですけど、私は『チェスをする人』、これを観た時になんていい監督だろう思いましたね。
    二人の太った人がね、チェスをやってるんですね。もう何にも考えないで二人がじーっと将棋盤見て将棋やってるところの風景がいいんですね。

    どっちも太ったおっさんで、ヒゲはやしたおっさんが、じーっと将棋をやっている。その着物が絹で奇麗ですね。
    嫁さんが、ちっともかまってくれない、将棋ばっかりやってと文句言ってるところを二人の男が将棋している品格がすごくいいんですね。

    「インドの映画いうのはみんな大衆的で、メロドラマで、もうほんと仕方がない」いう風な評判でしたけど、このサタジット・レイは、インド映画といってもハイクラス、トップですね、世界的なトップですね。
    そういう意味でサタジット・レイは、本当に凄い監督ですね。

    私は、『チェスをする人』を観て、この風格、サタジット・レイの風格に酔いましたね、いい監督だなあと思いました。
    インドでこんな監督が生まれたということは、映画の歴史で本当に大きく、大きく、残すべきことですね。

    【解説:淀川長治】