制服の処女
  • 原題:MADCHEN IN UNIFORM
  • 監督:レオンティーネ・ザガン
  • 脚本:
  • キャスト:ヘレタ・ティーレ/ドロテア・ヴィーク

  • 製作年:1931年
  • 製作国:フランス・ドイツ
  • ドイツ映画の『制服の処女』 懐かしいねー。ご覧になった人は今もうお爺さんだね。もうお亡くなりになっているかもわかんないね。そのぐらいの映画だけどこれは色んな想い出のある映画。『制服の処女』『MADCHEN IN UNIFORM』とか言いましてね。もうみんながね憧れて大好きな映画で、ドロテア・ヴィークという綺麗な綺麗なドイツの女優と、ヘルタ・ティーレという可愛い可愛い女優、二人の名作ですね。で、これはレスビアンなんですね。すごく当時珍しい映画でしたね。

    学校の先生、校長さんがとっても怖い先生だったの。けどこのドロテア・ヴィークの先生が優しい優しい先生なの。生徒にみんな好かれているのね。ところがその先生をこの校長さんは、あんまり優しくしすぎるから生徒が怠けて困るというので追い出そうとするんですね。さあ、生徒がみんな、みんなストライキしちゃったのね。「あの先生を辞めさせるなら私も辞めます」って騒動が起こったのね。そういう風に先生と生徒のとっても親しい愛情の溢れた映画だったんですね。その中でもドロテア・ヴィークのこの先生とヘルタ・ティーレの生徒がだんだんだんだん仲良しになって、しまいにはレスビアンみたいにあの先生が居なかったら私死んじゃう、あの子が居なかったら私死ぬ、いう感じの綺麗な映画だったんです。で、この二人の女優がすごく綺麗だったの。

    で、この原作がレオンティーネ・サガンで監督自身も、もうこの女の人なのね。全部女なの。そういう訳でこの映画は非常に女の感覚が溢れた映画なの。

    で、これを東和商事、東和映画ですね。あの最初の出来たての東和映画、その人が奥さんと川喜多かしこさんと一緒に新婚旅行に行ったのね。そうしてドイツ行った時に色んな見てあれも買いましょう、これも買いましょうと言った時に、かしこさん、奥さん、もう新婚旅行中ですよ、「私はあの映画とっても好きなのよ」と言ったのね「でもあれは女だけでね、名女優、名優出て無いんだよ。あれレスビアンだよ」「あの映画、綺麗綺麗、あんな綺麗な映画、あれ買わないと嫌々」と言ったんですね。で、もう困っちゃったのね。川喜多さん、あんな映画買ったってドロテア・ヴィーク誰も知らないし、ヘルタ・ティーレ誰も知らないんだよ。女ばっかり出てくるんだよ。男いないんだよ。あんな映画駄目だよ」「あれ買ってよ、あれ買って。あんな綺麗な女優いないよ。二人とも可愛い可愛い」

    もうしょうがないからってハネムーンのお土産に買って帰ったのね。そうしてこれを『制服の処女』という題名でやった時に日本で大当たりしたのね。東和商事、今の東和映画はこの作品で一躍儲かって、一躍、東和商事、東和映画の名前が一躍日本中に広まったのは『制服の処女』ですね。そういうふうなこれが名作なんです。ところが当時この映画観た時に、もう女の人が列を並べて、並んで映画館に駆け込んだのね。女の感覚が、女の嬉しさが女の優しさがこんなに出た映画なかったのね。綺麗な綺麗な映画。けど『若草物語』のような優しい映画じゃないのね。厳しいものがあるのね。女の愛情に厳しさ、こわさ、それで如何にもドイツ映画らしいのね。そういう意味で『制服の処女』これはもうあらゆる意味で一生忘れない映画ですね。

    ところが、ドロテア・ヴィークこれがあんまり綺麗なのでアメリカに迎えられてハリウッドに行きましたけれど、ドロテア・ヴィークはアメリカでは成功しなかった。やっぱりドイツの女優ですね。ヘルタ・ティーレも綺麗だった。これもドイツの女優ですね。ドイツの映画でこんな綺麗な映画があったという意味で『制服の処女』は今ご覧になってら皆さん、「あーこんな綺麗な映画」そう思いますね。で、みんなが校長さんにボイコットすんの。あの校長さんは嫌いだ嫌いだ言ってもう生徒中が全部でねストライキするあたり、当時そんな映画無かったから日本の映画ファンの、事に女の方はびっくりして拍手したんですね。もう問題の『制服の処女』は作品ですよ。

    【解説:淀川長治】