ベン・ハー
  • 原題:BEN HUR
  • 監督:フレッド・ニブロ
  • 脚本:
  • キャスト:ラモン・ノヴァロ/メイ・マカヴォイ

  • 製作年:1926年
  • 製作国:アメリカ
  • はい、『ベン・ハー』、もうこれは大変な作品ですよ。MGMがこれを二回つくっとります。
    サイレントの頃はフレッド・ニブロという監督、トーキーになったらウィリアム・ワイラー、ワイラーがこんな映画つくったんですよ。で、サイレントの頃はラモン・ノヴァロいう、かわいらしいヤサ男、それがベン・ハーを演りました。

    フランシス・X・ブッシュマン、これは大きな男でねえ。この人は最初の『ロミオとジュリエット』、サイレントのロミオすごいあたり役だったんですよ。
    美男子で体格が良くて、これがサイレントのメッサラとラモン・ノヴァロのこのベン・ハーの配役でしたね。

    トーキーになったら、チャールストン・ヘストンとウィリアム・ボイドですか、チャールス・ボイドですか、そういう役でしたがね。
    『ベン・ハー』の見どころ、これは戦車競争ですねえ。ベン・ハーと親友だったメッサラ、これが途中で敵と味方になっちゃったんですねえ。ベン・ハーはユダヤ人、片方はそうでないいうような関係もあったんでしょう。

    そして二人が偶然にも戦車競争の選手になったんですね。二人が競争するんですね。その場面が映画史上、今日までで一番凄いキャメラ。
    『駅馬車』でどんどん、どんどんキャメラが動きましたね、あれ以上のキャメラだったんですね。

    『ベン・ハー』いいますと、この戦車競争が見どころなんですね。サイレントの頃、この凄いキャメラでびっくりしたんですね。
    映画の歴史に『ベン・ハー』、サイレントの『ベン・ハー』は戦車競争で大きく、大きく、キャメラの歴史の第一番に残ったんですねえ。

    ところがトーキーになった。ワイラーですね。ワイラーがこれやれるのか?思ったら、やっぱりワイラーはこの戦車競争をフレッド・ニブロのサイレントに負けない凄いアクションでやりましたねえ。
    これがこの『ベン・ハー』の一番の見どころですね。

    どういうような競争か言いますとね、あの戦車競争、馬に乗って後ろから馬を操って、スーーーッ、走りますね。その時にメッサラの方は、どんどん、どんどん、ベン・ハーの車にぶつけていくんですね。そしてベン・ハーを倒そうとするんですねえ。

    その間にムチで馬を叩かないでベン・ハーの方を叩くんですね、卑怯な男ですね。
    それがどんどん寄ってきて、そのベン・ハーの車輪に「ドン」と当たっていくんですね。
    そこらあたりが凄いんですね。キャメラが凄いんですね。広い、広い、広場をどんどん、どんどん走るのをキャメラが、ずーーーっと追っかけてるんですね。この撮影は見物ですね。

    という訳で、このキャメラ、このキャメラが最高ですね。けれどもお話がやっぱりベン・ハーがユダヤ人で、片方がそうでなくて、二人が親友だったのが喧嘩して仲悪くなっていくとこあたりに、何かしら当時のバイブル、それを描いてるようなとこあるんですねえ。

    ベン・ハーがだんだん、奴隷に売られたり、いろんな事で苦しむんですね。そして最後の方で非常に苦しむんだけど、イエス・キリスト様がゴルゴダの丘に上がって行く時に十字架をかかえて喘ぎながら、みんな、わーーーってね、キリストをばかにして叫んでいるんですね。
    そういうバイブルのストーリーも入れて、この『ベン・ハー』は世界中で人気ありましたが、MGMはこの映画でたいへん儲けたんですね。

    『ベン・ハー』はMGMの宝ですね。けれども僕らが観るのは、やっぱりキャメラ。そのキャメラの凄いこと、もうびっくりするぐらいですよ。
    そういう訳で、映画の歴史として『ベン・ハー』のキャメラ、これは永久に映画の歴史の中でキャメラの読本として残るでしょうねえ。

    そういう訳で『ベン・ハー』はいろんな意味で、よくもこんだけ撮影できたなあ、さあ、それはどんな撮影したんだろう、それがみなさんの見所だと思いますねえ。

    【解説:淀川長治】