バグダッドの盗賊
  • 原題:THE THIEF OF BAGDAD
  • 監督:ラオール・ウォルシュ
  • 脚本:
  • キャスト:ダグラス・フェアバンクス/ジュラン・ジョンストン

  • 製作年:1924年
  • 製作国:アメリカ
  • ダグラス・フェアバンクス、有名な有名な、サイレントの大スターですね。
    そのダグラス・フェアバンクスが最高の『バグダッドの盗賊』、この話をしましょうね。

    これおもしろいんですね。
    『バグダッドの盗賊』、ラオール・ウォルシュという監督が見事な成果をあげました。

    ラオール・ウォルシュに私は、ユニバーサルで会いました。
    私がハリウッドに行った時に、生まれて初めて監督に生で会ったのはラオール・ウォルシュでした。
    ラオール・ウォルシュに会った時に「ウォルシュさん、あなたは『バグダッドの盗賊』の監督でしたねー」、それでいっぺんに喜んじゃったのね。
    そんな古い映画言ってくれたから、良く言ってくれたないう顔したんですね。

    そういう訳で、ラオール・ウォルシュという人の名作ですけど、『バグダッドの盗賊』はユナイトの最高の超大作ですね。

    この映画ですけど、そのセットの見事な事。ビアズレー、あの猿の撮影者ですね…絵を描く人で、撮影じゃないね、挿し絵描く人ですね。あのスタイルで全部見事なセットなんですね。
    見事なセットで、セシル・ビートンという有名な美術家が協力したんですね。
    この映画観たら驚く見事さですね。

    上山草人、アンナ・メーワン。
    これが出てくるんですね。
    蒙古の王様とそのスパイがアンナ・メーワンという中国の女ですね。
    ああ、もうその舞台のきれいな事。
    ところがこの上山草人、この役始めは違う人だったんですね。
    違う人がこれやるはずだったんですね。

    この始めやった人はドイツの人だったんですね。
    ところが、その人が酔っ払いで出て来なくて上山草人が変わりに出ることになって、上山草人はこの役でいっぺんに有名になりました。この頬骨が立った、なんともしれないオリエンタルな顔してるのでえらい有名になったんですよ。

    ところが、この人は本当はこの役じゃなかったんです。
    ちょうどダウンタウンに町周りの剣劇屋一座が来てたんですね。
    その剣劇一座の侍役を、ラオール・ウォルシュは蒙古の王様にしようと言ったんですね。

    それが蒙古の王様に決まった時に、上山草人はわざわざスタジオ行って、あの人はあまりにも町周りのお方だから、この大役にはちょっと貧相だと思います。そんなこと言っちゃったんですね。

    そこで、ラオール・ウォルシュが上山草人の顔を見て、君出たまえと言ったんですね。
    上山草人はそんなつもりでじゃなかった。でもウォルシュが君出たまえと言った、顔がいかにもオリエンタルだったから。
    それで草人は主役することになったんです。蒙古の王様役の。

    ところがそれを聞いて、この取り替えられた剣劇スターが上山草人を殺すと追っかけまわしたこともあるんですね。
    そういう事件もありましたけど、この映画はもう本当に美術品ですね。
    アメリカ映画でこれだけの美しいセット、美しい感覚を描いた。上山草人を入れた、アンナ・メーワンを入れた、ジュラン・ジョンストンという女優を入れた、この『バグダッドの盗賊』、最高ですね。

    ダグラスはいつも剣劇の俳優で、ゾロとかあんなんばっかりやってましたが、これで一躍ファンタジーの童話の中の主役になりましたね。
    このダグラスがお姫様を乗せてカーペットでサーッ、空を走るとこあるんですね、星空を。
    それなんか当時びっくり仰天したぐらいに、すばらしい、すばらしい超大作でしたよ。

    【解説:淀川長治】