SCARFACE

暗黒街の顔役

原題: SCARFACE
監督: ハワード・ホークス
キャスト: ポール・ムニ/ジョージ・ラフト
製作年: 1932年
製作国: アメリカ
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暗黒街の顔役 = 『スカーフェイス(Scarface)』
これは、ギャング映画。本当のギャング映画の、本当のナンバーワンの作品ですね。 凄かった。『スカーフェイス』

  これは、もう有名な、有名なポール・ムニの主演映画ですね。アル・カポーネの伝記映画ですね。恐くて、怖くてビックリしたけれども、私はこれで、ギャングという物の世界を覗きました。で、これは、ハワード・ホークスの監督ですけど、怖い映画でしたね。
親方、親分、もう暗黒街の親分。その親分が自分の妹と情婦を一緒においてるんですね。けれども、自分の情婦にはもちろんサービスしますが、けど、自分の妹にも肉欲を感じるんですね。怖いですね。このいかにも下層階級の、下層階級の、下層階級のいかにも野蛮な怖い肉欲ですね。で、自分の妹にも迫るんですね。
そういう怖い映画ですけど、この男が、「世界は俺の物だ!」自分のホテルの向かい側にね、ネオンサイン、当時イルミネーションですね。それに、“世界は我の物”という電光が出ているんですね。電気広告が。それを見て、「あれは、俺だ!俺だ!」と言っている様な人で。もう、あらゆる、いっぱい子分がいるんですね。子分が有るんだけど、この男自身、最初、親方がいても裏切る。何か言っても裏切る。裏切りで、裏切りで、だんだん、だんだん有名になった卑怯!卑劣な男ですね。

この男が、自分の妹にも恋したんですね。妹に。恐いね~。 肉体的に。それで、この妹の恋人がいるんですね。それが、ジョージ・ラフトが扮しているんですね。まだ、新人の。それが、ある時、訪ねて行った時に、「チッツ! あいつ邪魔になる!」と言ったんですね。ジョージ・ラフトを。ジョージ・ラフトは、その妹の恋人なんですね。 それが、表で待っている。妹は出てくる。
その前に、このジョージ・ラフト扮している子分が、コイン持ってて、パッと投げては受けて、パッと投げては受けて。これ、癖なんですね。この男の待っている間のね、投げて受け取る、投げて受け取る。
ところが、「あいつ、殺っちゃえ!!」バーン!!!!と廊下で、撃っちゃったんですね。(コインを)パッと投げた時に撃たれて、「アッアッーッ-!」倒れた時に、倒れた手に、コインが落ちたんですね。それが、エライ評判になってね。ジョージ・ラフトは、それで一躍有名になりましたけど。

ギャング映画の、最高ナンバーワンですね。

残酷極まり無いこのギャング。このギャングが、一番最後に包囲されて、色んな、色んな裏切りが有って、色んな事で、とうとうこの親方が、ポリスに包囲されちゃうんですね。そうして、このぉー細榴弾を撃たれるんですね。逃げ場が無くなって、困って困った時に、この主役の男は大きな声で

「助けてくれーッ!!! 助けてくれーッ!!!!」「俺を助けてくれーッ!!! 俺を助けてくれーッ!!!!」 

って、死ぬんですね。

そこらあたりに、この映画の何とも知れん残酷な、ギャングのボスの、哀れが出てくるんですね。いかにも、いかにも、面白いギャング映画のナンバーワン!でしたね。
スカーフェイスゆうのは、顔に傷が有る事ですね。顔に傷が有る事ですね。『スカー・フェイス』は後に、どんどん、どんどん皆に映画化されて、どの監督にも憧れの的、ギャング映画の手本だったんですね。
で、コッポラがこれを本当に好きで。これが好きで、『ゴット・ファーザー』、あれは、この、『スカーフェイス』を元にして作ったもんですね。そのあたり、いかにもこの 『スカーフェイス』 は、映画の教科書ですね。
怖い、怖い映画でしたよ。

【解説:淀川長治】