GREED

グリード

原題: GREED
監督: エリッヒ・フォン・シュトロハイム
キャスト: ギブソン・ゴーランド/ザス・ピッツ
製作年: 1924年
製作国: アメリカ
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エリッヒ・フォン・シュトロハイム『愚かなる妻』。あの問題の監督がユニバーサルを放り出された。あんまり凄い金かけたから。これで困っていたところがサミュエル・ゴールドウィンが拾ってMGMへ呼んで「お前の好きな物作れ。」と言ったんですね。

さあシュトロハイムは好きな物作れ言われたんで、いっぺんに喜んだんですね。それが『グリード』『貪欲』さあ怖い映画ですよ。マクティーグ、この男の話なんですね。で、これは簡単に話を申しますとマクティーグと言う炭鉱夫のごっつい男が居たんですね。ところがその村に巡廻の歯医者が来ました。アメリカ昔、昔はそういう医者が巡廻で来るんですね。テント張って。それに、俺はもう炭鉱夫やめてあの人の弟子になろう。「金要んからどうか使って下さい。」家出してその歯医者の弟子になりました。そうしてずっとアメリカ中廻りました。ひと月、ふた月、三月、一年、そのうちマクティーグは歯の治療を覚えました。そうして歯の色んな入れ歯から何から何まで勉強してマクティーグは、これなら歯医者になれると思いました。それでサンフランシスコ行った時にそいつらと別れてその歯医者と別れて自分で一人で小さな部屋借りて、そこで歯医者をやりました。それがマクティーグの歯医者の始まりですね。

ところが友達が出来ました。マーカスと言う友達が出来ました。それで二人で仲好くなって一緒に酒呑んだりしているうちに、そのマーカスがマクティーグに言ったんですね。「俺ちょっと相談があるんだ。」「何だ?」「俺、トリーナと言う女と結婚するんだ。」そうしてトリーナはそのマクティーグの歯医者行ったんですね。トリーナは妙な顔した女、綺麗じゃないんですね。妙な顔した女、小柄の。ところがどこかに肉欲的な、どこかに男を誘惑するようなムードがあるんですね。そうして女を知らない、何にも知らない、本当に野暮の塊のマクティーグ。炭鉱夫上がりのマクティーグが歯医者で治療しているうちに、この女の方は純朴な純朴な女知らずの男にだんだんだんだん参っていくんですね。そうして3日、4日、5日行くうちにだんだんだんだんマクティーグの歯医者に寄っていったんです。口を、口をどんどん寄っていったんです。とうとう二人は接吻しちゃったんですね。接吻した時にこのマクティーグ、女知らずのマクティーグはいっぺんにトリーナに夢中になったんですね。もうトリーナが居たら俺は命が要らん言うくらいにこの女に惚れ込んじゃったんですね。そうしてマーカスに打ち明けたんですね。「俺にくれないか?」って。

マーカスは驚いたんですね。「俺の女だよ。俺結婚するんだよ。」「わかってる、わかってる、けど俺はもうどうしてもあの女が欲しいんだ。」マーカスは考えた。男気だした。「よし、やるよ。」と言ったんです。「いいよ、やるよ。」それで、マクティーグは喜んでトリーナと結婚したんですね。トリーナは誰とでも良いんだ、金さえあったら良いんだ、そういう女ですね。一緒になった、その時にマーカスは二人に富くじ一枚やったんですね。「これが俺のお祝いだ、あばよ。」と言ったんですね。男気だして。ところがその富くじが二百万円当たったんですね。びっくり仰天した。二百万円の金が入った、びっくりした。トリーナは自分の金です、と言ったんです。「あたいのあの男から持って来たんだからあたいの金。」だと。マクティーグは「どうだって良いよ、お前の金で良いよ。」と言ったんですね。そうして結婚の晩からもうセックスなんかどうでもいいの。金ばっかり握って勘定するのが好きなのね。マクティーグはあくびして、「おい、早く寝ろよ。」言っても女寝ないんですね。で、女はその金を銀行持って行って金貨とかえてきたんですね。チャラチャラチャラチャラいっぱい持って。そうして亭主が歯医者やっている間ベットでずっと金、並べるんですね。もう病気ですね。マクティーグはそんな事知らないからいつもの飯食って教会に行っても「ねえ、あんた私、細かいの無いのよ。あんた払っておいて。」そんな女になってきたんですね。自分のハンドバック見たら細かいの有るのに細かい金までも渡さない様になってきたの。だんだんだんだん貪欲、貪欲、貪欲になってきたんですね。ところが片っぽのマーカス、「女はやるわ、金やったその富くじが金当たったわ、俺何のためにこんな事になったんだろう?何のために俺はこんな事になったんだろう。」だんだん嫉妬、嫉妬、嫉妬で…。

怖い映画でした、『グリード』『貪欲』見事なシュトロハイムの傑作ですよ。

【解説:淀川長治】