SUNRISE

サンライズ

原題: SUNRISE
監督: F・W・ムルナウ
キャスト: ジョージ・オブライエン
製作年: 1927年
製作国: アメリカ

『サンライズ』これは、もう有名な有名なムルナウと言う監督。このフランク・W・ムルナウと言う監督の代表傑作ですね。で、これズーデルマン、有名な小説ですね。それの映画化ですね。で、これを私が観た時に本当に映画言う物の美しさ言う物をこんなに表現できるものか、とびっくりしたんですね。

最初は俯瞰撮影で大都会の停車場が映るんですね。上からですね。上から映るといっぱいの人が停車場に居るんですね。汽車が有るんですね。汽車がやがてスタートするんですね。その時スタートする汽車、人を乗せて行く汽車、都会を離れる汽車、そっから始まった時にキャメラが凄いな。と思いましたね。
で、やがて汽車が田舎に行くんですね。田舎へ、その都会の女が入って行くんですね。マーガレット・リヴィングストン言う女優ですね。この女優がいかにも都会の女で田舎を馬鹿にして、「こんな所に行くのかね」言うて入って行った所から、ここの田舎の農家の夫婦が居ますね。ジョージ・オブライエンですか、ジョージ・オブライエンと言うね、非常に若者の筋肉的な田舎の男と、ジャネット・ゲイナー優しい優しい嫁さん。夫婦がまだ結婚して間もない夫婦。そこへキャメラが持って行ってこのジョージ・オブライエンを都会の女、マーガレット・リヴィングストンが、ちょっと面白い男だなと嬲るんですね。

男の方は嬲られるよりも都会の女の香水、その着物、それにびっくりするんですね。都会の女は綺麗なんだなー。綺麗だなーと。と思うとそれを利用してマーガレット・リヴィングストンのこの女は、どんどんどんどん誘惑して、「あんたみたいに好きな人ないわ、あんたみたいに良い人ないわ、あんたみたいに好きな人ないわ。」って冗談でどんどん誘惑するんですね。田舎の男ジョージ・オブライエンは本気で惚れるんですね。本当に惚れたな、と思うんですね。本当に好きだと思うので、自分の嫁さんの事をだんだん忘れて行くんですね。

嫁さんは優しい優しいあのジャネット・ゲイナー。あの優しい女優の扮している嫁さんですね。それをどうにかして邪魔になってきたんですね。邪魔になってきて、そうして殺してやろうと思うんですね、その嫁さんを。まあ可哀想に。その都会の女はそこまで、ちょっと誘惑するんですね。「あんたの奥さんが邪魔よ」となんて言うんですね。それを本気にしてとうとう嫁さん船乗せるんですね。このあたりが怖いなー。ボート乗せて「向こうの島までちょっと行こうか」なんて言うんですね。「お父さん、どうしてそんな事言いだすの?」と言った。「いや、面白いからね」と言うので嫁さんも「まあそうかしら、そんな事言ってくれたのかしら」まあ初め喜んでボートに乗るんですね。そこからが怖いね。どんどん漕いで行くんですね。漕いで行くうちに嫁さんがそのお父さん、主人の顔見ていくうちに怖くなってくるんですね。お父さんの顔が変わってくるんですね。人相が。殺す顔になってくるんですね。びっくりするんですね。「キャー」って泣くんですね。そのあたりの湖水、二人きり乗っているボート。それ怖いな。びっくりするんですね。

この映画ではびっくりする所は、ただしーんとする湖水でいよいよ殺すいう所でバーと風が吹いてくるんですね。ところが後にこのシーンを真似たアメリカの作品では、バーと鴨がいっぱい飛び立った所映るんですね。みんなこの湖水真似しましたね。ムルナウのこの湖水は最高でしたね。

『サンライズ』はそういう風な訳で、いかにもムルナウの名作ですけど、ムルナウの名作と同時に、この映画のヘルマン・ズーデルマンですか、この人の小説の凄い凄い文学が、美術の名文の姿がそのまま映画の中に出てくるんですね。そういう訳でこの映画は『サンライズ』これはムルナウの本当の代表的作品です。で、ムルナウは『タブー』だとか沢山、沢山、作品作りました。ムルナウが『サンライズ』作ったという事は幸せでした。ムルナウだからこの『サンライズ』は綺麗な映画になりました。都会、大都会のその大都会を嫁さん連れて行く所、ところが嫁さんはいっぺん自分殺そうとしたから、とっても旦那さんを信用しない。旦那さんをうかがっている。それを嫁さんに詫びる為にメリーゴーランド乗せたり、色々乗せる。だんだんだんだん嫁さんは本当に主人は自分を愛しているのか?本当なのか?だんだん疑う所、凄いですよ。この映画、いかにも若い夫婦の美しさと怖さが溢れたムルナウの名作ですね。

【解説:淀川長治】