THE PILGRIM

偽牧師

原題: THE PILGRIM
監督: チャールズ・チャップリン
キャスト: チャールズ・チャップリン/エドナ・パーヴィアンス
製作年: 1923年
製作国: アメリカ

私の最も愛しているチャップリンの代表作品の『偽牧師』この話しましょうね。チャップリンの映画はドタバタ映画。面白い面白い、笑う笑う映画だけどいつでもチャップリンの映画にはメロドラマ、人間のドラマが入り込んでいるんですね。それがチャップリンの得意中の得意ですね。そうしてチャップリンは面白い面白いドタバタコメディには必ず背中合わせに悲劇が悲劇、何か悲しい物が付いてこそ喜劇が面白いんだよ、と言ってました通り、このチャップリンの『偽牧師』は代表的な映画ですね。

チャップリンは脱獄者、そうしてある日海岸で泳いでいると牧師が泳いでいたのでその牧師の服を着て逃げたんですね。そうして汽車に乗って有る所に着いた時にみんなは牧師さんを迎える一団が居たんですね。チャップリンを迎えたんですけど、チャップリンは本当は脱獄者ですね。それだのにみんなは牧師と間違ったんですね。で、チャップリンを連れて帰ったんですね。チャップリンは又チャップリンで何でもしゃべるのが上手いからその教会でのお話でも色んな色んなもう見事な見事なみんなをびっくりさせたんですね。チャップリンは有名なその町の牧師になったんですね。「まあ、あの方は立派だよ、あの方は立派だよ。」チャップリンはそれで安心したんですね。「これでわしも生活が出来る。」ところがその牢獄で知り合った泥棒がチャップリン見たんですね。「お前はあの時のあいつだろ。」言われたんですね。

チャップリンはその為にどんなに強請られるか、どんな怖い目にあうか言うのがこの『偽牧師』ですね。これは面白い面白い滑稽だけれど強請られる映画で怖い映画でヒッチコックですね。それをチャップリンはコメディで見せたんですね。だからチャップリンの映画は非常に笑いで面白い面白い笑うけれどその裏側には怖い怖い人間のドラマが有りますね。

【解説:淀川長治】