チャップリン作品集4 『スケート』『勇敢』

監督: チャールズ・チャップリン
キャスト: チャールズ・チャップリン
製作年: 1916年-1917年
製作国: アメリカ
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チャップリンの『スケート』と『勇敢』。
これ、どっちもね、さすがに立派ですね、おもしろいですね。

『スケート』。これ観てるとチャップリンは本当に上手いです、スケート。
で、そのスケートが生まれるダンスですね、見事に踊りますね。なんとも知れん、上手いですね。チャップリンがどうしてこんなにスケート上手いのか、斜めの走るとこなんか上手いですね。

チャップリンどうしてこんなに上手いのか。これはチャップリンが子供の頃から働いて働いて、当のカルノ一座に入った時、その一座でいろんな芸やったんですね。
その時にこのスケートの芸を舞台でやってきたんですね。
それがここで見事に活動写真の中で、もういっぺん華開いたんですね。
スケーター立派でした。
チャップリンがどんなに芸人かいうことよくわかりました。

それと同時にもう一方の作品、これがすごかったんですね。
チャップリンの『勇敢』。
これは、ちょっとみなさんに言っておきたいのは、この頃ドタバタ喜劇はほとんど、おまわりさんは悪党なんですね。おまわりさんは悪い役ばっかりやるんですね。だから、おまわりさんをコメディにした映画沢山あったんですね。おまわりさんを馬鹿にした映画多かったんですね。それで、キーストン時代におまわりさんが5人、いっつも出てくるんですけど、その5人のおまわりさんをキーストン・コップと言ったんですね。

そのぐらいにおまわりさんを馬鹿にした映画多かったのは、当時、ハリウッドの若い頃、その頃はおまわりさんが嫌われていたんですね。
「あっおまわりさん来たぞ」言って、博打やめたりするんですね。
で、おまわりさんを憎んじゃったから、おまわりさんをコメディにしたんですね。
というわけで、そのおまわりさんを馬鹿にした中で、チャップリンは、この『勇敢』でおまわりさんを見事な華にしたんですね。

これはまたチャップリンなんですね。チャップリンがね、なんとも知れん、弱々しい、小さな、小さな男のポリスマンなんですね。
こんな男がね、どうしておまわりさんなったいうような男なんですね、それが非常に人類愛に燃える。

一人女が物盗んだんですね、市場で。
それ、チャップリン見たんですね。「こら、おまえ、そんなもの盗んでいいのか」言った時に「妊娠してるから堪忍して下さい」言ったんですね。
「妊娠してるのか、おまえ」、パッとめくったら、実はキャベツなんですね。妊娠じゃないんですね。

けど、それ見てチャップリンは、「そうか、こいつはこんなに苦しんでいるのか」思って、そのエプロンを隠してやって、「それ、持って帰れ、持って帰れ」って、チャップリンは許してやったんですね。
チャップリンが、ちょこちょこちょこ町歩いていると、この町一番の悪い男、大きな男がやってきて、もうチャップリンなんかひねりつぶすような男なんですね。それがチャップリンがどんなに見事にやっつけちゃうかいう所がおもしろいのね。

いろいろチャップリンのその演技のすごさがあって、最後はチャップリンが男に「おまえはつええな、つええな、はぁ、つええな」って、男は「俺はつええんだよ」言って、街灯、大きな街灯ギューッと曲げたんですね。
曲げた時に、その街灯の口の中に、チャップリンはその大きな男の顔を突っ込んじゃっうんですね。
それでスコッってひねったんです、ガスを。
で、男はひっくり返って、うーうーと苦しんで終わりですね。

見事なチャップリンのポリス。
チャップリンがどんなに勇敢に警官の姿を見せたか、たいがい警官を馬鹿にした映画多かったのに、チャップリンは警官万歳という映画作ってえらい評判になったんですね。

【解説:淀川長治】