ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『少しの愛だけでも』『デスペア 光明への旅』

11月13日(金)より

Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下他
全国順次公開

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配給:アイ・ヴィー・シー IVC @Fassbinder2026

INTRODUCTIONイントロダクション

人間の心理を鋭く穿つ鬼才
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

当時、日本での劇場公開が叶わなかったファン待望の2傑作が満を持して上映!

ヴェルナー・ヘルツォーク、アレクサンダー・クルーゲ、そしてヴィム・ヴェンダースと並び「ニュー・ジャーマン・シネマ」を代表するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。彼が37歳という若さで急逝してから40年以上が経った今も、閃光のように駆け抜けた生涯で遺した傑作たちは、私たちの心を激しく揺さぶり続けている。従来のモラルや映画の規範を過激に飛び越えたファスビンダーは、1970年代、破竹の勢いで時代の寵児へと登り詰めていった。その中で、ナチス台頭期のベルリンを舞台に他者になり替わろうと完全犯罪を目論む男を描いた『デスペア 光明への旅』と、愛という名の「支配と搾取」を冷徹に暴き出した『少しの愛だけでも』は、彼の毒烈な作家性が最も鮮明になった到達点である。

2作品の発表から長い年月が経過した、2026年。絶え間ない紛争、不穏に揺れる社会。SNSで「私らしさ」が過剰に追い求められる一方で、複数のアカウントの狭間でアイデンティティは分裂し、私たちはかつてない自己喪失の時代を生きている。そして世界に希望を見いだせない閉塞感が漂っている。これらはまさに両作が描く主題そのものであり、改めてこの2作と対峙することは、私たちの視界を——決して優しくはないが、確かな強度をもって——開かせてくれる、痛烈な映画体験となるだろう。

FILMS作品紹介

FILM 01日本劇場初公開

少しの愛だけでも

若くして結婚したふたり、満たされぬ心が運命を狂わす

愛の搾取を痛烈に描いた名篇。主人公の青年は「他者から愛され、認められたい」という想いから、過剰な献身と労働に身を投じ、精神的に追い詰められていく。ファスビンダーの全キャリアの中で最も私的な作品と評され、彼自身の過酷な少年時代が色濃く投影されている。さらに巨匠ダグラス・サーク監督などのハリウッド・メロドラマから強い影響を受け、ドイツの戦後社会の問題やそこに生きる人々を描き出した。撮影は『デスペア 光明への旅』と同じくミヒャエル・バルハウスが担当。テレビ映画として製作され、長い間鑑賞が叶わなかった貴重な作品。

出演:ヴィートス・ツェプリヒャール、エルケ・アーベルレ、アレクサンダー・アラーゾン ほか

1975-76年 | 西ドイツ | カラー | 105分 | 4:3 | DCP

字幕翻訳:渋谷哲也

『少しの愛だけでも』場面写真1
『少しの愛だけでも』場面写真2

FILM 02日本劇場初公開

デスペア光明への旅

ファシズムの時代、完全犯罪を目論む男、崩壊する精神

ナチス台頭前夜のベルリンを舞台に描く美しき狂気の物語。原作は名著『ロリータ』で知られる世界的文豪ウラジーミル・ナボコフの長編小説『絶望』。映画化不可能と言わしめた小説に果敢に挑み、ファスビンダー初の英語作品として国際市場を狙った最大の野心作。撮影のミヒャエル・バルハウスによる流麗なカメラワークや、イギリスを代表する名優ダーク・ボガードの圧倒的な演技力が評価され、1978年カンヌ国際映画祭パルムドールにノミネート、1978年ドイツ映画賞では監督賞、撮影賞、美術賞を受賞した。ファスビンダー自身「生涯の3本」に数える思い入れの強い作品として知られている。

1978年カンヌ国際映画祭パルムドール ノミネート
1978年ドイツ映画賞 監督賞、撮影賞、美術賞受賞

出演:ダーク・ボガード、アンドレア・フェレオル、クラウス・レーヴィッチェ ほか

1978年 | 西ドイツ・フランス | カラー | 121分 | 16:9 | DCP

字幕翻訳:渋谷哲也

『デスペア 光明への旅』場面写真1
『デスペア 光明への旅』場面写真2

DIRECTOR’S PROFILE監督プロフィール

撮影現場のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

RAINER WERNER
FASSBINDER

1945–1982

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

1945年5月31日、南ドイツのバート・ヴェーリスホーフェン生まれ。51年に両親が離婚し、母リーゼロッテの許に引き取られる。16歳で中退した後は、父親の元に身を寄せて、アルバイトをしながら俳優の勉強を始める。そしてこの時期ベルリンに新設されたドイツ映画テレビアカデミーの入学試験を受験。不合格となる。その後、数本の短編映画を自主制作した後、67年より劇団「アクション・テアター」に所属。68年には仲間と共に劇団「アンチテアター」を設立し、俳優・演出・作家として活躍した。同時にこのメンバーによる挑発的かつ実験的な長編映画制作が始まる。

1971年アンチテアター解散の年、ダグラス・サークのメロドラマ映画に感銘を受ける。芸術的に様式化され、しかも大衆に受ける映画を作ろうと志し、『四季を売る男』(72)、『エフィ・ブリースト』(72-74)等の代表作を生みだした。1979年『マリア・ブラウンの結婚』の成功によりニュー・ジャーマン・シネマをリードする存在として幅広く認められるようになる。そして同年、念願の企画である『ベルリン・アレクサンダー広場』映画化を実現。その後『リリー・マルレーン』(81)や『ケレル』(82)など国際的スターが共演する大作映画を撮り上げた。1982年6月10日に急死、37歳没。

短い生涯の中で40本以上の作品を発表。女性の抑圧、同性愛、ユダヤ人差別、テロリズムなどスキャンダラスなテーマを多く扱い、ドイツ国内では非常に激しい論議を巻き起こしてきたが、「ニュー・ジャーマン・シネマ」を牽引したひとりとして今なお高く評価されている。

TRAILER予告編

THEATER劇場情報

11月13日(金)より全国順次公開

上映劇場一覧
地域公開日劇場名 公式サイト TELムビチケ
関東 11/13(金) Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下 公式サイト 050-6875-5280 〇
中部 12/11(金) 上田映劇 公式サイト 026-822-0269 〇
関西 近日予定 出町座 公式サイト 075-203-9862 〇
関西 11/14(土) CinemaKOBE(シネマ神戸) 公式サイト 078-531-6607 〇

COMMENTコメント

ファスビンダーが紅茶に砂糖を入れて差し出しても、誰も手を付けようとしなかった。直前に彼が何に触っていたか、知っているからだ。汚れたる者はさらに汚れたることをなせよ。これがこの呪われた監督の教えだった。

四方田犬彦(映画誌・比較文学研究)

『デスペア 光明への旅』

『デスペア』は、最も希望に満ちた映画だ

R・W・ファスビンダー

まるでディスコボールを通して撮影された、エロティックな『めまい』のような作品だ

Time Out

後期デヴィッド・リンチを予見している。

英国映画協会(BFI)

『少しの愛だけでも』

ただ愛してほしい —— それはささやかな願いなのか、過大な要求なのか。

だが手段を知らないペーターは、愛を買うために無理な行動を重ね、欺瞞の泥沼にはまり込んでゆく。あまりにも痛ましいファスビンダーの隠れた傑作。

渋谷哲也(日本大学文理学部教授/ドイツ映画研究)

『少しの愛だけでも』
『デスペア 光明への旅』予告編