物語と場所、音声と映像の邂逅と乖離。書かれた/話された言葉がシネマの基底を揺るがしていく。
文学から映画に接近し、深く追求した希有な作家、マルグリット・デュラス。
彼女が1970年代に手がけた五つの作品がブルーレイ化。
◆『インディア・ソング』India Song 1974
テクスト:マルグリット・デュラス/撮影:ブリュノ・ニュインッテン/音楽:カルロス・ダレッシオ/編集:ソランジュ・ルプランス
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンダール、マチュー・カリエール、クロード・マン、ヴェルノン・ドブチェフ
1930年代のインド・カルカッタ。フランス大使夫人アンヌ=マリー・ストレッテルへの不可能な愛で狂気に陥る副領事の物語。
小説「ラホールの副領事」から登場人物などの設定を受け継いでいる。
全編においてオフの声を活用し、映像と音響の関係の新たな境地を開いた。
デュラスの映画における代表作。
◆『ヴェネツィア時代の彼女の名前』Son nom de Venise dans Calcutta désert 1976
撮影:ブリュノ・ニュインッテン/編集:ジュヌヴィエーヴ・デュフール
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンダール、ニコール・イス、マリー・ピエール・ティエボー
前作『インディア・ソング』の大使館邸として使用されたパリ郊外のロスチャイルド邸。
改修を間近に控え、廃墟となった館の内外を緩慢な移動で捉える映像に、『インディア・ソング』のサウンド・トラックがそのまま重ねられる。
映像と音のズレによって前作を「破壊」する本作を、デュラス自身は映画でなした最も重要なものとした。
◆『バクステル、ヴェラ・バクステル』Baxter, Vera Baxter 1976
テクスト:マルグリット・デュラス/撮影:サッシャ・ヴィエルニ/編集:ドミニク・オーヴレイ/音楽:カルロス・ダレッシオ
出演:デルフィーヌ・セイリグ、クローディーヌ・ガベイ、ジェラール・ドパリュデュー、ナタリー・ネル、フランソワ・ペリエ
近代的な邸宅でヴェラ・バクステルは、一人の女に語りかける。
それは夫婦間に起こった出来事。
夫が見知らぬ男に金を払い、ヴェラに姦通させたことである。
デュラスは、夫に忠実でいて自らの欲望に苦しむ主婦ヴェラに中世の「魔女」を見出す。
デルフィーヌ・セイリグの力強い演技が光る。
◆『トラック』Le Camion 1977
テクスト:マルグリット・デュラス/撮影:ブリュノ・ニュイッテン/編集:ドミニク・オーヴレイ、カロリーヌ・カミュ
出演:マルグリット・デュラス、ジェラール・ドパルデュー
寂寞とした郊外を走るトラックとその車窓からの風景。そして、室内でシナリオを読むデュラスと聞き手のドパルデュー。
シナリオはトラックの運転手が中年女性を乗せる設定で語られる。
デュラス=女は、階級闘争、ユダヤ人、世界の終りを辛辣に語る。
◆『船舶ナイト号』Le Navire Night 1979
テクスト:マルグリット・デュラス/撮影:ピエール・ロム/編集:ドミニク・オーヴレイ/音楽:カルロス・ダレッシオ
出演:ドミニク・サンダ、ビュル・オジェ、マチュー・カリエール
パリの夜、孤独から逃れるために電話を使って語り合う者たち。
互いの姿を知らぬまま、愛を深める者もいる。
視覚と聴覚が分断された電話というモチーフによって、デュラスはイマージュの不可能性を語ろうとする。
監督: | マルグリット・デュラス |
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脚本: | マルグリット・デュラス |
撮影: | ブリュノ・ニュインッテン、サッシャ・ヴィエルニ、ピエール・ロム |
編集: | ソランジュ・ルプランス、ジュヌヴィエーヴ・デュフール、ドミニク・オーヴレイ |
音楽: | カルロス・ダレッシオ |
出演: | デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンズデール、マチュー・カリエール、クロード・マン、ヴェルノン・ドブチェフ、クローディーヌ・ガベイ、ジェラール・ドパリュデュー、ナタリー・ネル、フランソワ・ペリエ、マルグリット・デュラス、ドミニク・サンダ、ビュル・オジェ、マチュー・カリエール |
製作年: | 1974/1976/1976/1978/1979 |
製作国: | フランス |
上映時間: | 120分+114分+91分+76分+89分 |
映像色: | カラー |
字幕: | 日本語 |
音声: | フランス語 |
規格: | 二層×1、一層×3 |
画面サイズ: | 16:9 |