THE KID
原題: | THE KID |
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監督: | チャールズ・チャップリン |
キャスト: | チャールズ・チャップリン |
製作年: | 1921年 |
製作国: | アメリカ |
チャールズ・チャップリン見事な俳優ですね。見事な監督ですね。
この人の『犬の生活』、怖いけど悲しいけど良かったね。見事でしたね。このチャップリンがやがてファースト・ナショナル言う会社で『キッド』を作りましたね。『子供』ですね、『キッド』。それが凄い、これ今ご覧になったらチャップリン言う人がどういう人か分かりますね。つまり映画は目で見る物、映画は口でしゃべらなくても目で見る物。それがこの映画観ていますと完全に本当に目でずーっと分かってきますね。
で、これはチャップリンの番頭さんの日本人の高野虎市と言う人がある日、日曜日に映画館に観に行ったら映画館で映画と映画の間にボードビル、子供が出て来てお父さんと一緒に踊ったり笑ったりする所があるんですね。その子供があんまり可愛い、アンコールすると出てきてにっこり笑って両膝を上手く広げたりする。あんまり可愛いのでチャップリンに「いっぺん見なさい、いっぺん見なさい。」と言ったんですね。チャップリンが「そんなの見たくない」と言うのを無理に連れて行ったらチャップリンが一目で気にいったんですね。「あの子いいな~。ジャッキー・クーガン、いいな~。」そうしてその子いっぺんに連れて帰って来て、まず最初に『一日の行楽』。おとっつあんが子供を連れて公園に行ってへとへとになって帰ってくる短編物にその子供を使ったんですね。「うん、この子供はつかえる!つかえる!」それで『キッド』一躍この子供を『キッド』の主役にしたんですね。それが見事なジャッキー・クーガンの見事なスタートでしたね。
という訳でこの映画はもうメロドラマいかにも美しいメロドラマ。で、チャップリン、エドナ・パーヴィアンス、その代表作品ですね。で、『キッド』をご覧になったら映画のコメディは、本当は悲しい中に笑いがある。それでこの笑いがいかにもいかにも悲しいこのストーリーの中に笑いがあると言う所に笑いが活きてくるだと言う事を言ってます。
で、この『キッド』観てますとこの子供が見事なんだね。硝子屋になって2人が一緒に出かけて行くんですね。チャップリンが硝子屋ですね。で、子供が先に行ってパーンパーンと硝子割って行く。その後からチャップリンが「えー硝子屋でこざい、硝子屋でござい。」と言って2人で商売するんだけど、チャップリンは昔、貧乏で貧乏で困った時にやっと兄さんが帰って来た、家出した兄さんがシドニー・チャップリン。で、二人で7つか8つぐらいの2人で硝子屋に奉公したんですね。まず硝子屋で奉公してそれから金貯めてカルノー一座に入ったんですね。その硝子屋に入ってた、その硝子の経験を『キッド』で活かしてるんですね。
で、この『キッド』で面白い事はこの時にチャップリンは、ミルドレッド・ハリスと言うエキストラ、その綺麗な女優に一目惚れして夢中になったんですね。夢中になってそうして結婚したんですね。『キッド』の時に結婚したんですけど、この16才の女のミルドレッド・ハリスは毎日毎日一緒にどっか遊びに行く。毎日毎日オペラ見に行く。毎晩毎晩何か豪華なパーティーに行く、それを楽しんで楽しんで来たのにチャップリンは撮影していると1日も2日も3日も帰って来ない、もうカンカンに怒ってチャップリンとは別れる、別れるって言ったら、お母さんが「チャップリンと別れなさい。その代わりチャップリンの持っている物全部取りなさい」と言ったんですね。お母さんに言われてこのミルドレッド・ハリスは狙ったのは『キッド』のもう90%出来ているフイルムでしたね。「あれ、持って逃げろ、あれ持って逃げろ。それであれを3つに分けて短編にして売ろう」と言いました。そうしてチャップリンの『キッド』を狙ったんですね。それを高野さんが感付いたんですね。危ない危ない!言うんでチャップリン呼んでその『キッド』のフイルムを持ってテ―っと逃げたんですね。そうして砂漠地帯に逃げて砂漠の一軒屋行って、一軒屋の中で『キッド』を編集したんですね。ミルドレッド・ハリスがそれを取ろうとしたんですね。そういう様な影の話がありますが『キッド』は見事なチャップリンの運命的な作品ですね。
【解説:淀川長治】