ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT

西部戦線異状なし

原題: ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
監督: ルイス・マイルストーン
キャスト: ルイス・エイヤース/ルイス・ウォルハイム
製作年: 1930年
製作国: アメリカ

『西部戦線異状なし』お読みになりましたか?レ・マルクの有名な小説ですね。これ映画になりました。ドイツの作家が作りました。話、反戦映画ですね。それをドイツが描いたんですね。よく通りましたね。

で、この『西部戦線異状なし』これはルイス・マイルストーンと言う監督、もう後に有名な有名になりましたね。その監督が作りまして、監督しまして一躍有名になりました。

で、『西部戦線異状なし』はとっても反戦映画なんですね。青年が戦争に行け、戦争に行け、戦争に行ったら本当の国を守る人になるんだ、立派な立派な戦士になるんだ言う事をね、もう教会の牧師も言うし学校の先生も言うので、その若い青年がリュー・エアーズ扮する青年が勇み勇んで参加したんですね。ところが中身は凄い残酷な世界でなんたる世界か、思ったくらいの苦しい苦しい兵隊の話なんですね。そうして今度はちょっと休暇に帰って来て、若いもの、若いもの、絶対に戦争に行くなよ、行くなよなんて言う様な事もあるんですね。

で、反戦映画なんですね。それをドイツの作家が作ったんですね。小説家が作ったんですね。そうしてこれは色々色々ありますけれども塹壕の中の苦しい生活、戦争の辛い辛い想い出の中にそのアメリカの兵隊がどんどんどんどん行って或る塹壕の穴があったんです。そこへ滑り込んだ時にそこへフランスの兵隊が逃げ込んで来たんですね。思わず逃げ込んで来たらパンパンと撃っちゃったんですね、思わず。ドイツの兵隊だと思って、撃ったらその男がパッタリ倒れたんですね。目を空に向けて、死んじゃったんですね。この若い兵隊は初めて人を殺したんです、真正面で。びっくりしたんですね。殺しちゃった、殺しちゃった、俺は人殺ししたんだ思ったんですね。そうするとそのフランスの兵隊のポケットからパラパラと写真が落ちて来たんですね。見たら奥さんと子供の写真なんですね。びっくりした。目の前に死んで半分目を開いているその兵隊がいるんですね。これをレイモンド・グリフイスと言う有名な俳優が演りました。で、こっちの若いのはリュー・エアーズこれはまだ若い若い役者ですがびっくりして震えて、えらい事した、えらい事した言う所が凄かったですよ。そういう風にこれは反戦映画、人間と人間が何故こんな殺しあいをするのかいう。

そうしていよいよ激しい激しい戦争があって一時休止。そういう事があったんですね。昔昔の第一次大戦の時は。そうしてシーンとしたんですね。もう戦場がシーンとしたんですね。一時休止。もう大砲の音もしなければ、もう銃も飛んで来ない。それで、ホッとした。ところがその若い兵隊がちょっと上覗いたんです、塹壕から。スーッと一匹の蝶ちょが飛んで来て目の前止まったんですね。「可愛い蝶ちょだな、ああ可愛い。」この若い青年がそれつまんで取ったんですね。取った思ったらこの手が塹壕の上に出たんですね。それで向こうの敵のがバーンと撃ったらこの人に当たって死んじゃったんですね。可哀想に。このリュー・エアーズの若い兵隊はお母さんが待っているのに戦場で死んじゃったんですね。けどその日の報告、毎日、毎日、報告する、その報告には「西部戦線異状なし」、何にも変わった事ありません、言う通知が出たんですね。いかにも可哀想な映画ですね。という訳でこの映画はユニバーサルのもう代表的な戦争映画の第一号ですね。

で、この映画出たリュー・エアーズ若い若い若い青年ですね。初めて世間に出て行く青年ですね。それがとっても良かった。ところが面白い事にグレタ・ガルボがこの映画観て「私はリュー・エアーズ大好きです。」言ったんですね。ガルボは絶対男好かないんですね。ガルボは女が好きだけど男好きにならないんですね。で、有名な有名な音楽家が結婚申し込んでもNO!NO!絶対結婚しない人。それがリュー・エアーズ見て「あの人可愛いわね。」それがえらい評判で、リュー・エアーズはガルボに惚れられた言うのが評判になった、それぐらいにリュー・エアーズは可愛い青年でしたね。で、『西部戦線異状なし』はそういう物裏でありますけど、観ていると本当の戦争映画でこれほど見事な戦争映画無かった。見事なユニバーサルの超大作ですね。

【解説:淀川長治】