LA ROUE

鉄路の白薔薇

原題: LA ROUE
監督: アベル・ガンス
キャスト: セヴラン・マルス/ガブリエル・ド・グラヴォンヌ
製作年: 1922年
製作国: フランス

『鉄路の白薔薇』これはフランスを愛する人、フランス映画を愛する人は絶対に知ってらっしゃる名作ですね。しかもこれは本当にもう今観ても見事ですね。で、これはアベル・ガンス言う人が監督しましたね。アベル・ガンスこの人は映画詩人ですね。後にこの人は『ナポレオン』作りましたね、アベル・ガンス。それは画面を3つに分けて3つの場面で色んな色の進行見せましたね。とにかく映画で無いと出来ない感覚を見せる人でしたね。このアベル・ガンスのこれは見事な名作です。

この作品は長いんですね。最初の方は「黒のシンフォニー」と言うんですね、第一部。第ニ部は「白のシンフォニー」と言うんですね。そういう風に分けて私らをびっくりさせましたね。「黒のシンフォニー」、いったい何だろう思いましたね。しかもこれが機関士の話で、だからまず汽車が出てきますね。汽車が出てきますね。汽車これは映画の魂ですね。もう汽車が走って来るだけでも映画は凄いですね。その機関士の話でね。この機関士の話だけど、この機関士の男が昔倒れた、車が転覆した。その死んだ中に生きていた女の子を助けて自分の養女にしたんですね。それが第一部ですね。黒の時代ですね。そうして、子供は大きくなっていったんですね。で、その子供は男と女の子、仲良くなっていったんですね。お父さんもこの娘好きになって来たんですね。で、次は「白の交響楽」になってくるんですね。さあこういう映画ですね。「黒のシンフォニー」「白のシンフォニー」いったいどうなるか?

その子供二人が大きくなってお父さんと三角関係になっていくんですね。怖い話ですね。という訳で話はご覧なさい。けどこれで面白いのは汽車と言う物、機関士と言う物、そうしてこの愛と言う物、そうして三角関係と言う物、そうしてどういう事になっていくか、この話がどういう事になっていくか、それがまるで小説のメロドラマの様に大きな分厚い長編小説の様にアベル・ガンスのこの手法で圧倒的に見事に流れていくんですね。で、この『鉄路の白薔薇』はフランス映画の好きな人は教科書ですね。もうかつてこんな映画あったんだよ、フランスにはこんな映画あったんだ言う見事な見事な教科書ですよ。『鉄路の白薔薇』これ、今ご覧になったらみなさんはフランス映画にこんな濃厚な映画あったのかと思われてびっくりなさるでしょう。けれどもメロドラマと言えない芸術品ですね。これこそ、本当のフランス映画の魂ですね。で、みなさんご覧になって目の見えなくなったこの老機関士、それと息子、娘、この娘と息子が仲良くなっていく、けどこの老機関士もその娘が愛してた。そういうような愛の世界、しかも愛の世界が残酷だ。そういう事が溢れてこの映画は目で見る見事な小説ですね。身に沁みこむ小説ですね。アベル・ガンスはそういう監督でしたね。

アベル・ガンスのこの名作はどうか見逃さないでみなさん大事に心に抱いて下さいよ。

【解説:淀川長治】