THE PERILS OF PAULINE
原題: | THE PERILS OF PAULINE |
---|---|
監督: | ジョージ・マーシャル脚本: |
キャスト: | ベティ・ハットン |
製作年: | 1947年 |
製作国: | アメリカ |
はい、『ポーリンの冒険』この話しましょうね。私この『ポーリンの冒険』とっても好きなの。パール・ホワイトなの。
パール・ホワイトは連続活劇の女王なのね。ベティ・ハットンが演りましたけどどんな女優か?サイレントの頃、私が八つ、九つ、十、十一、十二、十三、その頃はもう映画館全部連続大活劇。で、連続大活劇のスターはいっぱいいたんですね。パール・ホワイトはトップワン。その他ルス・ローランド、プリシラ・レーン、エラ・ホール、いっぱい居ましたね。だいたい女が主役ですね。やっぱり女優がスターだったんですね。そういう訳でパール・ホワイトのこの『ポーリンの冒険』言うのはもう連続ナンバー、映画のナンバーワンだったんですね。で、パール・ホワイトこの人を僕は本当に愛しましたね。僕は七つ、八つの頃の一番の愛人、私の最初のスイート・ハートはパール・ホワイトでしたね。
で、私はこのパール・ホワイトの映画観たらもう嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、学校行きまして、小学校の学校行きまして三年生、二年生の頃ですね。わたしがパール・ホワイトになるんですね。休憩時間に。そうして柱にくくってもらうんですね。そうして「あれー、あれー、助けてー助けてー。」言うとマンデイ言うね相手役の男が飛んできて私からロープはずしてくれるんですね。で、私の学校のあだ名はパール・ホワイトだったんですね。『ポーリンの冒険』はそのパール・ホワイトの映画なんですね。
ところが嬉しい事にジャン・ルノワールあのフランスの有名な監督の幼年時代、少年時代のあだ名がパール・ホワイトなんですね。面白いね。という訳でパール・ホワイトは連続活劇のもう最高の女王。で、私はパール・ホワイトを愛して愛してものすごく愛してパール・ホワイトのブロマイドを大事に大事に持って枕の下に入れて寝たんですね。
で、ある日パール・ホワイトがあんまり好きだから学校の先生の前で無理にそのパール・ホワイトのブロマイド落したんですね。先生が怒るかどうか思って。そうしたら先生が拾って「おう、これ何だ?べっぴんだなあ。」と言ったんで喜んだんですね。という様な事があってパール・ホワイトは私の最初の愛人ですね。
パール・ホワイトの他にプリシラ・レーン、エラ・ホール、マリー・ウォルキャンプ、たくさんたくさん居ますけど連続活劇のもう大スターと言うのはみんな女優でしたね。そういう所がやっぱり女優と言う人の魅力言うのがどんなに映画館で大きな力持ってるかと言うのが分かりますね。という訳で、『ポーリンの冒険』これは連続活劇の最初のもう第一歩と言いたい題名ですね。『ポーリンの冒険』。さあ、これで、今日みなさんがこの映画ご覧になったらどんなどんな女優かお分かりになると思いますよ。
【解説:淀川長治】