THE MERRY WIDOW

メリー・ウィドウ

原題: THE MERRY WIDOW
監督: エルンスト・ルビッチ
キャスト: モーリス・シュバリエ/ジャネット・マクドナルド
製作年: 1934年
製作国: アメリカ

『メリー・ウィドウ』、皆さん、良くご存じのメリー・ウィドウワルツは、有名で有名で、子供まで知ってますね~。

『メリー・ウィドウ』、レハールのオペラですね。有名なオペラですね。これが、映画になりました。最初に映画になった時には、これを、シュトロハイムが、映画にしました。エリッヒ・フォン・シュトロハイム、メエ・マーレー、ジョン・ギルバートが主演しました。

ところが、シュトロハイムは、この作品を映画にした時に、メエ・マーレーという女優、この女優が、非常~に綺麗な女優で、ダンスが上手くて見事なダンスなんですね。ダンサーあがりの、有名なスターなんですね。メエ・マーレー。

ところが、メエ・マーレーという人はね、どのプロマイド見ても、どのステージみても、絶対に笑わないの。で、「メエ・マーレーさん、あんたどうして笑ったスチール、撮らないのよ。」と言ったら、「私、笑ったら、顔にしわが出来るからイヤだよ。」そんな事言う人だった、メエ・マーレー。それが、この『メリー・ウィドウ』で、ワルツが綺麗~に踊れるから、ジョン・ギルバートと共演しましたね。

で、監督が、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、あの『サンセット大通り』の、あの運転手ですね。それが、もう有名な有名な、シュトロハイムとは有名な大監督なんですね。それが、『メリー・ウィドウ』を掴んだんですね。MGMで。それでやったところが、どうしてもメエ・マーレーが気に入らないの。

それで、言いましたね。

「あんた、あんた、大根だね。」ったら、メエ・マーレーが、卒倒しちゃったんですね。その場で。それで、3日間ほど、撮影来なかったんですね。そういう事があって、大変な事件が多かった、『メリー・ウィドウ』です。ところが、それを今度は、エルンスト・ルビッチが、映画にしたんですね。ルビッチいう人は本当にパラマウント呼ばれたドイツの名監督ですけど、ルビッチの映画ゆうのは、みんな、女が綺麗くて、女が綺麗くて、映画が流れて、見事な監督なんですね。

だから、このエルンスト・ルビッチの『メリー・ウィドウ』。これは、見事な映画になりましたね。ことに、ジャネット・マクドナルド, 綺麗~な、綺麗な歌う女優、もうトーキになって、入ってきた見事な女優ですね。それと、モーリス・シュヴァリエ見事な歌い手ですね。この2人を使って、映画にしましたから、ルビッチの『メリー・ウィドウ』というのは、絢爛たる、名作になりましたね。

しかも、ルビッチいう人が、見事な舞台監督もやった人ですから、この『メリー・ウィドウ』のワルツの綺麗な事、綺麗な事。もう、そのワルツの、映画のカットバック、カットバック、カットバック、オーバーラップ、オーバーラップ、このワルツみんなの、群舞の踊りの、この輪が、綺麗くて、綺麗くて、ビックリして、音楽も綺麗くて、「あ~メリー・ウィドウって綺麗だな~」と思いましたよ。

けれども、やっぱり、ルビッチは、それだけで済まさない人ですね。恋というもの、恋というものが、どんなに綺麗なものか?ゆう事をみせたいので、綺麗な、綺麗な場面出しました。そして、この未亡人と、それから男爵のダニーロ。これがね、バルコニーの上、女。で、下で、ダニーロ。この2人が合唱するところがあるんです。その時の、綺麗な、綺麗な音楽。“ヴィリヤ”ですね。『メリー・ウィドウ』の恋の歌ですね。それが、見事で、私はガラガラ声で言えませんけど。 ♪ヴィリヤ~oh ヴィリヤ~oh♪ oh~ヴィリヤー♪ リ~ラ~ラララ~ラ♪

もう、このメロディーの綺麗な事、綺麗な事。
この、音楽聴くだけで、ヴィリアの音楽聴くだけで、涙がこぼれるんですね。そのぐらいに、このシ―ンの見事だった事。ルビッチがどんなに、このラブシーンで、この音楽をとけこまして作ったか?いう事がわかって、ルビッチの見事な名作ですね。

ところが、この“ヴィリア”の音楽。この音楽の、恋のメロディーが、あんまり綺麗だから、ずっと後に、『ベニスに死す』あの見事な名作で、あのおじさんが、作曲家が、初めて見る少年、あの少年が、初めて見る所で、この“ヴィリア”音楽を流しましたね~。

そういう訳で、『メリー・ウィドウ』は色んな意味で、影響ありますけど、ルビッチの『メリー・ウィドウ』これは、天下一品の作品です。で、ルビッチいう人は、もう女を描いたら、最高!!!しかも、ドイツから来た人で、パラマウントが本当に、ワーナーブラザーズとパラマウントが両方で、ルビッチを宝石の様に可愛がりましたね。エルンスト・ルビッチは見事な人で、例えば、ワンカットでも本当に面白いんですね。好きでもない、好きでもない男と結婚した女が居ましたね。金が有るから。『メリー・ウィドウ』では、ありませんよ。その時に、その金持ちが、朝、ハネムーンで、朝出て行った時に、ドアから出てきて、表にあった植木鉢を、パーン!っと蹴るんですね。それで、わかりますね。昨晩、何があったか。。全然女が、相手にならなかったんですね。そういうワンカットでも、とっても凄いんですね。

という訳で、エルンスト・ルビッチのこの『メリー・ウィドウ』。この人の名作ですよ。

【解説:淀川長治】