UN CHIEN ANDALOU
原題: | UN CHIEN ANDALOU |
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監督: | ルイス・ブニュエル |
キャスト: | シモ―ヌ・マルイユ/ピエール・バチェフ |
製作年: | 1928年 |
製作国: | フランス |
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『アンダルシアの犬』 私たちは、これ観て、びっくりしたんですね。
これ、ブニュエルって人のね~監督作品なんですね。この人は、本当のシュールリアリズムの非常に、個性的な作品を出す人なの。
で、「アンダルシア」に、ひっかかったのね。何だろう?『アンダルシアの犬』いうから、怖~い、スペインの怖~い映画かと思ったら、感覚映画で、全然思いもしない場面が、どんどん、どんどん、出てきたんですね。ブニュエルいう人のこの不思議な感覚。
これを、ダリという絵描きが協力したんですね。だから、益々、益々、個性的になって、私たちは、これ観た時に、何だろう? 思ったのね。こんな映画、何だろう? 思ったのね。
例えば、ピアノの上に、死んだ牛か、ろばがドターっと置いてあるのね。それだけの事。何だろう? けど、気持ち悪いんだね~。そうすると、又、女の人の目が出てきたのね。クローズアップで。それをね、指二本で、広げたのね。女の目がクリクリとむいたのね。そこ安全カミソリで、キャーと切ったのね。もうそれ観た時には、ゾーっとしたのね。
そういう所ばっかりを集めて、私たちに、目から見る感覚の怖さね。それをどんどん、どんどん、あおらせたのね。『アンダルシアの犬』は、ダリの絵の、この不思議な不思議なグロテスクと、この監督の、なんともしれん、目の感覚ね、目で見て恐怖する。それを合わしてやったのね。
皆、びっくりした。今なら、本当に行列で、並ぶくらいの美術、芸術的な作品ですけど、当時は、『アンダルシアの犬』は、一般にあんまり、歓迎されなかったね~。そういう映画ですけど、僕らは、『アンダルシアの犬』を観たという事で、ダリという人の感覚と、この監督のなんとも知れんシュールな感覚を、うんと勉強しましたね。
そういうわけで、まあこういう風な映画が、当時、サイレントから、トーキの頃、良くあったのね。ルネ・クレールなんかもこういう感覚でしたね。
ルネ・クレールもまあパリの、色んな歩いている人が、パリのタワーの傍で、全部!ストップして、全部!止まっちゃうのね。そしたら、どうなるだろう? そういう映画を作ったり。色々そういうのがあって、それを、シュールリアリズムと言ったんですね。
この監督の作品は、それを、もうどんどん、どんどん、奥深く、奥深い感覚作品で、みんなは、これで、映画というのは、こういう事も出来るんだな。文学では出来ない事をやるんだな~。目の感覚のこんな怖さも観せるんだな~いうので、そこが、勉強になりましたよ。
【解説:淀川長治】