GULLIVER'S TRAVEL

ガリヴァー旅行記

原題: GULLIVER'S TRAVEL
監督: デイヴ・フライシャ―
製作年: 1939年
製作国: アメリカ

もう、皆さんが小学校から中学校の頃にどんどんお読みになった、あのガリヴァー旅行記。
これが動画、アニメになったんですね。

しかもそれがディズニーじゃなくてフライシャー兄弟がやったんですね。
フライシャー兄弟のアニメは「ベティ・ブープ」だとか「ポパイ」だとかいろいろありますけど、この人のはハイカラ、非常にモダンなんですね。
ディズニーはどっちかいうと子供向き。みんな家庭向きで、やさしい、よくわかって、しかも童話らしいアニメをつくるんですね。

フライシャーは少し違うんですね。
ハイカラなんですね。非常に何か、どっか都会的なんですね。
人によっては、ディズニーは子供向きだけどフライシャーは大人向きだ、なんてことが評判になったことがあるんですね。

フライシャーはなかなかいいんですね。
映画の中にジャズ音楽を入れたり、いろんなことして非常にモダンなんですね。
モダン、ハイカラなんですね。ハイクラスなんですね。
そういう人が「ガリヴァー旅行記」作ったの。

ガリヴァーの大きさと、その土地の人たちの小ささを見事に、見事に描いて、ガリヴァーがどんな大きい男かいうことを見事に見せて、「ガリヴァー旅行記」はびっくりぎょうてんの面白い映画になったんですね。
しかもそれが非常に都会的なんですね。どう言っていいかわかんない、みんなが右往左往するとこが面白いですね。そういう意味でこのフライシャーの映画は見事でした。

でもフライシャーはハイカラすぎて、いつもモダンすぎてディズニーに負けましたね。
ディズニーよりもずっとハイカラだったんです。
けど、そのハイカラさがかえって邪魔しましたね。都会すぎて。

というわけでフライシャー兄弟の、この「ガリヴァー旅行記」は本当にフライシャーの置き手紙ですね。
もう、フライシャー、いま出ていませんから、本当になつかしい、なつかしい作品です。
この「ガリヴァー旅行記」を今ごらんになったら、どんなにこのフライシャー、この監督、アニメの作者がデリケートか、よくお判りになると思いますよ。

【解説:淀川長治】