THE TAMING OF THE SHREW

じゃじゃ馬馴らし

原題: THE TAMING OF THE SHREW
監督: サム・テイラー
キャスト: メアリー・ピックフォード/ダグラス・フェアバンクス/エドウィン・マックスウェル/クライド・クック
製作年: 1929年
製作国: アメリカ
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『じゃじゃ馬馴らし』のお話しましょうね。

これは、おもしろいことにダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードの共演なんですね。
シェイクスピアの有名なお話で、一流の人はみんな『じゃじゃ馬馴らし』やるんですね。

で、これは男が女をいじめる映画なんです。男が女をむちゃくちゃにいじめる映画なんです。それでシェイクスピアの非常に面白い、大評判になった映画なんです。

どんな話かといいますとね、もう生意気で、生意気で、手に負えない女がいるんですね。
その女を男がいじめるために、大事に、大事にしたように見せかけて、ご馳走並べて「さあ、おあがりなさい」と、その女に言うんですね。
女は、「まあうれしい。お腹すいたわ、いただきましょう」と思ったら、パーン!とそのご馳走みんな捨てちゃうんですね。

この娘に、こんな貧しいものを食べさせちゃだめだよ…と、また出すんですね。
これでいただける、思って食べようとしたら、またパーン!とやって、いくら出しても食べさせないで、もうその女が半泣きになるんですね。
おなかすいた、おななかすいた、今まで威張っていた女が泣くんですね。
それが『じゃじゃ馬馴らし』ですね。

それをダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードがやったんですね。
ダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードは夫婦ですね。
で、メアリー・ピックフォードとダグラスがどんな生活しているかと言うことを、ちらっと覗かせたようなプライベート映画なんですね。けれども二人が共演した映画で、こんなに面白い映画になって大当りしましたよ。

一番面白いのは、生意気な女を男がどう馴らすかという面白さが、この映画の中でよく出てまして、シェイクスピアという人、なんでも面白く書きますね。
で、この映画『じゃじゃ馬馴らし』は、有名な俳優が必ずいっぺんやるんですね。で、メアリー・ピックフォードとダグラス・フェアバンクスは、もう世界で有名なカップルなんですね。

二人は結婚して世界中まわって、日本にも来たんですね。
メアリー・ピックフォードとダグラスは、もうすごいすごい人気で、この夫婦はどちらも人気トップワン。おまけに、大きな、大きなお屋敷。もうこんな立派な夫婦ないなということになって、日本に来た時も日本の三味線、太鼓でダンス踊ったこともあるんです。

それくらいに仲良かったのに…二人は別れたんですね。
実際に、人間ってどんなに幸福でも自分で破壊するんですね。
ダグラス・フェアバンクスと、そのメアリー・ピックフォードが別れちゃったの。この『じゃじゃ馬馴らし』の後で。
そういうわけで、これは問題の作品ですね。で、私はどっちが悪いか知りませんよ。

けれども、メアリー・ピックフォードは、もう終わりの頃は、バディ・ロジャースという、かわいい、粋な、粋な年下の男の子が好きでその人と一緒になったんですね。
ダグラスは、またダグラスで別の年上の女と仲よくなったんですね。
そういうことがありましたけれども、そのバディ・ロジャースという年下の男の人は結婚してから、ずっと亡くなるまでメアリー・ピックフォードを大事に、大事にしましたね。
だから、割合にメアリー・ピックフォードは男運の良い女優でしたね。

世界で最高の男優、世界で最高の女優が結婚してハッピーエンドになるのに、別れるなんて言うことは、やっぱり人間ていうものは、本当にこわいものですね。

【解説:淀川長治】