THE RIVER
原題: | THE RIVER |
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監督: | ジャン・ルノアール |
キャスト: | パトリシア・ウォルターズ/アドリエンヌ・コリ/アーサー・シールズ/ノラ・スゥインバーン |
製作年: | 1951年 |
製作国: | アメリカ |
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僕の最も好きな監督、ジャン・ルノアール。
この人の『河』。
これやりましょうね。
これは、おもしろいお話なんですよ。
このジャン・ルノアールが、ちょっとアメリカ行ったんですね。
アメリカで『南部の人』とかいろいろ撮ったんですね。
ロサンゼルスの人がみんな、ジャン・ルノアールのファンだったんですね。
「ジャン・ルノアールさんの映画はきれいだなあ。きれいだなあ」ということになって、ロサンゼルスのハリウッドの花屋さんがジャン・ルノアールに会いに行ったんですね。
「どうかルノアールさん。きれいな、きれいな映画を撮ってくださいませんか?ここに資金がありますから。」
ちゃんとお金集めてきたんですね、花屋さんが。
ルノアールは感激したんですね。
「それじゃ僕は、あなた達が好きなような映画ができるかわからないけれども、ひとつインドの映画を撮りましょう。」と、言ったんですね。
インドが一番カラーがきれいだからインドの映画撮りましょう、と言ったんですね。
みんなよろこんだんです。
そうして、『河』は生まれたんですね。
『河』はきれいな映画でしたね。見事にきれいでしたね。
インドの匂いがぷんぷんしましたね。
インドと言うのは、砂で模様を描くんですね。赤い砂、青い砂、黄色い砂で、きれいに、カーペットのように砂で絵を描く美術家が沢山いるんですね。
そのインドで、早春、若い、若い女の子が、初恋のような、愛に対して憧れてるようなお話なんですね。
きれいな、きれいなお話だけど、その中に何があるか?花祭があるんですね。
色祭があるんですね。みんなが手にいろんな色、持つんですね。
赤い色、黄色い色持って、お互いそれ投げあうんですね。それがきれいなんですね。
その中の3人か4人の早春の女の子の一人がインドの女の子なんですね。あとはイギリスの女の子、アメリカの女の子。
そのインドの女の子が、お祭りのためにダンスを勉強するんですね。
ダンスを踊るんですね。
そのダンスのきれいなこと、きれいなこと。
しかも、その女の子がカタカリかカタハリかしらないけど、パッ、パッ、パッと踊る。
握った手が、パッと開くと中が真っ赤なんですね。
いいんですね〜、その踊りがいかにもいいんですね〜。
そして、この映画のインドの音楽がきれいなんですね。
やっぱりルノアール、やっぱりルノアールと思いました。
それを映画館で、チャイニーズグローマン劇場で私は友達と観にいったんですね。
まあーきれい!いいなー!本当にルノアールはいいなあー!、と言ってたら、となりの男の子が、いっしょにいた男の子がガーーーって寝てるんですね。
それ見てから、その男の子には一生僕もの言わなかった。
キライになった。絶交しましたね。
というわけで、この映画よかった。で、音楽もよかった。
日本に帰ってきて、「あー、いい映画だったよ!」って野口久光に言ったら、野口久光が「どんな映画?どんな音楽?レコードもってんの?」。
レコード渡したら、とうとうとられて、野口久光、亡くなりましても、あのレコードは返してくれなかったね。
そのくらい、この『The river』は、『河』はルノアールの名作。
ルノアールはこれを撮ってから、アメリカでいろいろ撮って最後にこの映画を撮ってから、フランスに帰りましたね。何年ぶりかで帰りましたね。
で、フランスで『フレンチ・カンカン』、あの最高の音楽作りましたね。
というわけで、ルノアールという人は、お父さんも立派だったけど、ルノアールの作品も立派でしたね。
【解説:淀川長治】