THE IRON HORSE
原題: | THE IRON HORSE |
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監督: | ジョン・フォード |
キャスト: | ジョージ・オブライエン/マッジ・ベラミー/C・エドワード・ブル/ウィリアム・ウォリング |
製作年: | 1924年 |
製作国: | アメリカ |
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『アイアン・ホース』、このお話しましょうね。
『アイアン・ホース』?何ですか?
これはインディアンが汽車を見て、『アイアン・ホース』、鉄の馬と言ったんですねえ。
で、これはどんな話か。もうこれからご覧になったらおわかりでしょうけれども、ちょうどこの映画の二年前に『幌馬車』という映画をパラマウントがつくったんですねえ。
私はこれ観てびっくりしたんですね。西部劇でこんなの初めてだったんですね。
つまり、東部で暮らせない人が、どうにかして行きたい行きたいと、西部へ西部へ行こう、百姓、農夫さんが...『怒りの葡萄』ですね。
みんなが、もう家財道具もみんな馬車へ乗せて、西部へ西部へ行く話があったんです。
それ『幌馬車』。その馬車が全部、幌かけてあったんですね。
それを十台、二十台、三十台、百台、百台並んで、ずーっと西部へ、西部へ行くんですね。オレゴンの山の上を超えて行くんですね。
この西部劇を観てびっくりしたんですね。西部劇がオレゴンの上のロッキー山脈通る時に、雪の上を通って行くんですね。西部劇いったら砂漠だとか草原ばっかりだ思ってたら、雪がでてきた言って当時びっくりしたんですね。
そいで、どんどん、どんどん行くんだけど、途中で断崖絶壁にそのワゴンが落ちちゃうとこがあるんですね。もう家財道具乗せて家族みんな乗って行くのに、落ちるんですね。 凄いなあ。
そうして西部へ行くんですね。こんな西部劇初めてだ思った時に、これはいわゆる開拓劇なんですね。西部劇というよりもアメリカの歴史なんですね。
凄いもんがあるなあ、『幌馬車』凄いなあ思ってると、フォックスがそれから一年経って「俺とこだってつくるよ」ってつくったのが『アイアン・ホース』ですね。
パラマウントがああいうの作ったら、俺のとこは西と東の鉄道がずーっとどっちもどっちも、走って走って、真ん中でくっつくやつを作ってやろう。
監督は?うん、監督は今ちょっと目ぼしいのいるけど、これ、いいだろう思う。賭けだけど、いいだろう思う。誰?ジョン・フォード、そう言ったの、びっくりしたの。
ジョン・フォードは、こんな大作つくるとは思わなかったの。
当時、それで一生懸命つくったのが、この『アイアン・ホース』ですね。
で、この『アイアン・ホース』は本当に鉄をどんどん、どんどん、敷くんですけど、枕木それからその線路敷くんですけど、そんなに働く人いないの。
でもう困って、困って、チャイナタウンの中国の人と日本人をどんどん使ったんですね。
で、日本人、そこで働いた人と、ぼく会った事あるんです、もうお爺ちゃんの。
そしてその時に言ったのは、もうあれはねえ、ああやって一生懸命やってるうちにね、みんな疲れて喧嘩になるんですって。そうして酒飲んで、喧嘩になって倒れて死んだら、そこ、野っぱらに放っぽらかして続けて働く、そんな事が本当にあったんですって。
『アイアン・ホース』は、そういう労働者の苦しい、苦しい、男ばっかりの話を映画にしてるんですね。
で、ジョン・フォードはこれを作って、一躍ジョン・フォードは大作の監督になったんですね。これはジョン・フォードの、本当の本格的スタートですね。
という訳で、『アイアン・ホース』はアメリカ映画のひとつの歴史ですね。
歴史、大陸横断の汽車がくっついた、東と西がついた、そういう意味でこの映画の汽車と汽車とがくっつく、重なるところが大喝采。アメリカならではという映画ですよ。
【解説:淀川長治】